第3章 青色~青峰~
昔とは違う。
青峰くんなんて、もう何の関係もないけど。
それでも…昔の、あのすごく楽しそうにバスケしてた青峰くんの顔が、私の記憶に残ってるから。
だからなのかなんて、分かんない。
分かんないけど。
「自分に勝てるのは自分だけとか言ってるヤツなんて、一度負けた方が良いんだよ、きっと」
「○○ちゃん」
青峰くんのチームメイトには何の恨みもないんだけどね、って茶化しながら、私は黒ちゃんに向けて笑顔を作った。
「それに、青峰くんなんか関係なく、私は黒ちゃんのこと応援してるよ」
「幼馴染み…ですからね」
「うん。火神くんの足も良くなるといいね」
「はい」
薄く笑い返してくれる黒ちゃんに、私は頷いた。
予選リーグまで、もうすぐ。
素人の私の目にも、火神くんの足が試合まで完治するのは難しいんじゃないかなって、本当は感じてる。
だって、あまり足を使わないように…なんて(だから待ち合わせも誠凛側のマジバだったんだし)、それだけ重症ってことなんじゃないのかな、なんてことは、もちろん言わない。
だってそんなこと、近くにいる黒ちゃんが一番わかってるはずだもん。
それをわざわざ私が口にするなんて、そんな無神経なことできっこない。
それにこのことは、当たり前だけど誰にも言ってないし、これからも、言わない。
あーちゃんとか、仲の良い子にも、誰にも。
黒ちゃんとは、わざわざそんな約束はしなかったけど、私達は、その後もいろんな話をした。
学校のこと、部活のこと、それからちょっとグチっちゃったり、黒ちゃんも珍しく弱音みたいなこと言ったりして。
お互い笑ったり励ましたりする、前に比べたら、こんな風にしょっちゅう話せるわけじゃないけど、やっぱり、たまにはこういうのも良いなあ、なんて思いながら、私はこの日、黒ちゃんとの会話を久しぶりに満喫した。