第3章 青色~青峰~
部員に知り合いがいなくたって、普通は母校を応援する気になるんだろうって思う。
私だって、もし……。
『俺に勝てるのは俺だけだ』
そんなこと言ってるあいつを知らなかったら、違う気持ちだったかもしれない。
だけど、いつだったか、放課後、偶然体育館の傍を通りかかった時、そんな話し声を聞いちゃったから。
ちょっと離れてて、あっちも気づいてなかったみたいだったけど、あの声は間違いなく青峰くんだった。
小学校の…あの後の青峰くんのことは、よく知らない。
だから、あんなに大好きで、楽しそうにしてたバスケの練習もほとんどしなくなったって、中学の時、誰かがそんなことを言ってたのを聞いた時にはすごく驚いた。
どうしてだろうって、思ってたけど。
まさか、そんな風に思ってたなんて。
自分に勝てるのは自分だけ。
だから自分はもう、これ以上練習して強くなろうなんて思わない。
通りすがりのあの瞬間、続いて聞こえた台詞に、私は驚く以上にものすごく、腹が立った。
駆け寄ってって、何考えてんのって言ってやりたいくらいだった。
だけど、部外者の私にそんなこと言う資格なんかない。
だけど、バスケが好きで、短い間だったけどバスケをしてたことのある私は、何だか無性に悔しくて、手が震えたのを覚えてる。
そしてあの時、私は思った。
いけないことかもしれないけど、思った。
(負けちゃえば良い!)
あんなこと考えてる青峰くんなんて……。
その気持ちは、今も私の中にあって、だから余計…なのかもしれない。
幼馴染みの黒ちゃんには、純粋に頑張って欲しいって思う。
だけど同時に、あんな青峰くんを倒して欲しいって、そう…思ってしまう。