第3章 青色~青峰~
テツは俺の家の場所を知ってるが、そのことで何か言う気はないらしい。
テツの目は、△△に向いていた。
「それじゃ、僕達はここで」
「うん、ありがとう黒ちゃん。……青峰くん」
おい、何だ今の間は?
っていう俺的心の呟きは、とりあえず飲み込んでおくと、
「黒ちゃん。私の家、すぐそこだから平気だよ」
「分かってます。でも、ちゃんと見てから行きますから」
「心配性だなあ、もう」
このパターン、久し振りだけど変わってないね、なんて笑って、△△は軽く俺達、ってより、ほぼ間違いなくテツに手を振って、自分の家に入っていった。
(『昔のパターン』…か……)
聞かなくたって、分かる。
テツの奴は、△△を家に送るたびに、こうして、あいつが家の中にちゃんと入ってくのを見届けてから、自分も家に戻ったんだろう。
昔から変わらない。
幼馴染みなこいつらの、これがそのパターンっつーより、当たり前の、決まり事。
俺とさつきには、生憎とそんなもんはねえが。
俺がサボってると、さつきの奴が探しに来て騒ぐくらいか?(けどそんなのは決まり事とは言わねえか)。
あとは…無駄に付き合いが長いせいか、互いの好みってやつは大体把握してるっつーくらいか。
幼馴染みっつったって、そんなもん、普通の友達より付き合いが長い分、関わりがあるってだけの話。
少なくとも、俺にとっちゃ、それだけのことだ。
幼馴染みだから、特別大事なんてこともねえ。
けど、テツは…恐らく……。
そんなことを考えてる俺に、テツが振り返った。
テツの家もすぐそこだ。
△△が家に入るのを見届けた俺達は、それぞれ自分の家に戻るはず…だったが。
「それでは、僕も失礼します」
実際そうしようとしたテツを、俺は呼び止めた。
「おい、テツ」
「はい」
おせっかいも詮索も、俺は好きじゃねえが。
「△△は、何でバスケやめたんだ」
こいつなら知ってるだろうと踏んで、俺はわざと切り込んだ。
あいつの過去を勝手に探るみたいな真似なんて、本当はしたくねえ。
けど、引っ掛かるんだ。
あんなに楽しそうにバスケしてたあいつなのに…って。
じっと俺を見上げてたテツが喋りだしたのは、それから少し間を置いてからだった。