第3章 青色~青峰~
んだよ、その顔。
それに何か、こんな風に普通な感じで喋ったのって、何年振りだ?
この前の屋上の時は、嫌々喋ってますって感じだったし(もちろんこいつがな)。
けど今は、普通に喋ってる。
たったそれだけだってのに、テンション上がる気がしちまう俺ってどうなんだよ。
俺は、冴木とテツの動きを遮るようにしながら、
「今だ!」
まるで俺の声でスイッチが入ったみたいに、△△は瞬間的にボールを構えた。
それは、俺が昔教えた『アレ』だ。
『青峰くんのシュート、私と格好が違うね?』
『ん?ああ、そうかもな』
ガキの頃に交わした、それは他愛のない会話だ。
レイアップやダンクは別として、普通にシュートする時、俺を含めた周りの大人達と、△△とは構えが違った。
俺達が打つのは、片腕を軸にするワンハンドシュート。
対して△△は、両腕に力を乗せてゴールを狙う。
それは単純に、腕力とか体格の違いのせいもある(いきなりワンハンドなんかやっても届かないからな)。
だから△△に限らず、中学くらいになるまでは、ワンハンドを打つ奴は少ない。
まあ、俺はしょっちゅうストバスに通ってたせいもあって、ガキの頃からワンハンドだったけど。
そんな俺達を見た△△は、ある日、自分もワンハンドシュートをやってみたいと言い出した。
だが、構えそのものは覚えられても、思うようにボールは飛ばない。
それでもあの頃、△△は何度も練習して、俺はそれにずっと付き合った。
ボールの持ち方とか構え方とか、まだ身体の小さい△△でも打ちやすいように、一緒に考えたりもした。
それでも結局、成功したのは、ゴール下から狙っても、数えるくらいだったけどな。
ま、あの頃はまだガキで、腕力も、何より身長も今よりチビなせいもあったが。
そして△△は俺の目の前で、何年か振りのそれを放った。
がしゃんっ!
結果としちゃ、リングに弾かれたが。
俺はすかさずゴールに駆け寄り、リバウンドを狙って飛んだ冴木の上からネットにボールを押し込んだ。
「思ったよりちゃんと届いたじゃねーか、よっ!」
ざっ!
勢い良くゴールネットを揺らすボールに背を向けて、俺は△△の前に立った。