第3章 青色~青峰~
テツのパスは相変わらず絶妙だが、受ける相手が悪い。
昔ストバスしてたっつっても、今の冴木にテツのパスは受け取れねえ。
テツもその辺はそれなりに加減してるみてえだが、それでもダメだな、こりゃ。
そんなこと考えながら△△を見れば、それなりにちゃんとディフェンスしてるのが、何か笑えた。
(そういや、こいつ。中学で女バスだったよな)
思い出した記憶には、続きがある。
△△は、途中でバスケをやめた。
理由は…俺なりに周りに聞いたりもしたが、分かんねえままだ。
けど…やめちまっても、バスケはまだ好きなんだな、こいつ。
顔見りゃ分かる。
俺はテツのパスをカットしながら、△△に声だけ投げた。
「お前とやんのも久しぶりだな」
昔はしょっちゅう一緒にやって、一緒にチームも組んだ。
こんな形でまたやるとは思わなかったが…せっかくだ。
「勝つぜ」
わざわざ言うまでもなく、当たり前だけどな。
俺は△△の位置を視界の隅で確かめると、△△にパスした。
「………っ!」
ぱしっ!
キャッチしたものの、△△の奴、びっくりしてやがる。
「って、おい!そこは驚くとこじゃねーだろが」
「え…あ、そっか」
ペアだってのに、パスされるとは思ってなかったってか?
ま、確かに俺はスタンドプレーばっかだけどな。
けど、今の俺の相棒は、お前だろーが。
「そっからなら届くだろ」
「え?」
「打ってみろよ、アレ」
「え……」
一瞬、△△が目を丸くする。
もしも、まだ覚えてるんなら。
覚えてねえ確率のが高いんだけどな、この場合、とか思ってる俺に、△△は情けない声を出した。
「あれって…あれ?」
(覚えてやがった)
今度は俺が目を見開いた。
ホント、らしくねーけど、ニヤける自分が分かる。
俺は、それを無理やり押し込めた。
見せられっかよ、こんな顔。
「他に何があんだよ?」
何でもなさそうに俺が言うと、△△は冴木からの攻撃を何とかかわしながら顔を顰めた。
「届くかもしんないけど、入んないよ」
絶対無理、って断言する△△に、俺は今度こそ笑ってやった。
「ケツは俺が持ってやる。ペアだろが?」
途端に、△△がきょとん、とするのが分かった。