第3章 青色~青峰~
「大丈夫ですか、青峰くん」
二度目の攻撃に、テツがコートのある方を見る。
で、そうなりゃ当然、△△だってそっちに気が向いちまうわけで。
くそっ、誰だか知らねーが邪魔しやがって。
(ぶっ殺すぞ、こらっ!)
俺が殺気立ってるのなんか構わずに、テツはマイペースで、路地に入ってすぐそこにあるらしいバスケットコートを覗き込む。
△△も後に続いたが、
「ひゃっ!?」
ぱしんっ!
またも吹っ飛んでくるボールを、△△の直前で俺が弾いた。
ったく、マジでどんだけ下手なんだってんだよ!
次第によっちゃ…って思ってた俺だったんだが。
「あれ、大じゃねーかー!」
「あ?」
「俺だよ、俺。冴木のお兄ちゃんだよ!」
「ああ?」
知るかよ、そんな奴…って俺が吐き出そうとしたら。
「お兄ちゃん?」
予想外で、△△が反応した。
「お前、こいつ知ってんのか」
ジャケット脱いでっけどスーツ姿のこいつは、どう見てもサラリーマンてやつだろ。
そんな男と△△が知り合いとか……。
(ねーだろ)
普通にそう思った俺の視界を掠めたテツの表情も、俺とそう変わらない。
お互い複雑な気分で眺めてると、その知らない男は△△に近づいてきやがって。
「ん?あれ?えーと、君は……」
考える素振りしながら、また△△との距離を縮めやがった。
って、もう目の前じゃねえか。
ざけんな!
「近すぎだろ、オッサン」
「お、オッサン!?ひでえ。ま、大にしてみりゃ、もうオッサンかもしれないけど。あの頃は可愛かったのになあ、いつの間にか可愛い女の子まで一緒…って、あーっ!」
ぺらぺら勝手に喋りまくったそいつは、今度はいきなり大声を上げて△△を指差した。
「思い出した!もしかして、○○ちゃん!?」
テツの時も思ったが、『○○ちゃん』じゃねーよ、ったく。
けど、当の△△は嬉しそうに笑いながら頷いた。
「あ、お、お久し振りです」
嬉しそうにしながら、けど緊張してるっぽい△△。
ムカつく絵だが、それ見て俺も思い出した。
『冴木』っていう名前も、俺の中でヒットした。
(冴木…つったら…)
まだ俺がストバスに通ってた頃、何人もいた大人の中に、そういえば……。
あの頃は、大学生だとか言ってたか。