第3章 青色~青峰~
忘れてた、つか…無意識だったせいで、こいつを抱き寄せてたの忘れてたぜ。
片腕だが、俺の腕ん中で、△△はおとなしかった(だから余計気づかなかったんだよ…無意識だったんだし)。
俺の片腕に巻き込まれるようにして、そのまんま俺の懐に閉じ込められてる△△が、暴れもせずにこっちを見上げてる。
珍しいこともあるもんだ…と思ったが、何てこたねえ。
いきなりのことでびっくりしてるだけだな、このツラは。
こいつと直接関わってたのは、ガキの頃のほんの一時だけだ。
だから俺が、こいつのことで知らないことが多いのは当たり前だろう。
けど変わってないとこだって、もちろんある。
それが今のこいつの、この状態みたいにな。
こいつと関わらなくなっちまった内に、互いに変わっちまったこともあるし、変わってないとこもある。
昔とは変わったこいつを知るのもおもしれえが、昔と変わらないこいつを見つけた時、妙な気分のような、こそばゆい気がしやがる。
けど、ま、それも……。
って思ってる内に、
「っ!」
そら来た。
顔真っ赤にした△△が、慌てて俺から逃げ出してく。
これも今じゃお約束…だな。
俺から逃げた先には、今日はテツがいる。
大方、テツの傍にでも逃げ込むんだろうって思った俺の前で、△△は俺からちょっと距離をとっただけで、顔は相変わらず真っ赤なまま、
「ご、ごめん…あり、がと……」
「…………」
途端に、らしくもなく、今度は俺が固まっちまった。
テツがそこにいるとか、んなことは全部頭から吹っ飛んでた。
「△△……」
俺の前で、んな顔すんなよ。
俺は……。
(俺は…本当は……)
本当は、あの時からずっとお前に詫びたいって……。
けど、俺がそう思った隙…だった。
ばしっ!
誰だっ、またボール飛ばして来たヤツ!
条件反射で、キャッチしちまったじゃねーか!