第2章 水色~黒子~
ちょっとマズい人に見つかってしまいました。
後ろめたいことはありませんが、直感的にそう感じるのはどうしてでしょうか。
こく、と勝手に喉が鳴る僕に、カントクはつかつかと近づいてきて。
「まだ残ってたの? 熱心なのは良いけど、無理は禁物だからね」
生徒会の副会長でもあり、部の監督とマネージャーもこなすこの人は、それを生き甲斐としているようにいつも生き生きしています。
「僕はもう帰るところです。カントクこそ、今まで残ってたんですか」
生徒会とバスケ部との掛け持ちなんて、考えなくても忙しそうですが。
まだ残っていくんですか、と続けて訊ねる僕に、カントクはちょっと疲れたように首を左右に傾けながら、んー、と小さく唸りました。
「本当はもうちょっとやってきたいとこなんだけど。今日はこの辺りで切り上げよっかなって思ってね。データの解析には、まずその入力が必要でしょ」
「入力作業をしていたんですか」
「うん、まあね。解析はともかく、入力してくれる人がいたら、もうちょっと色々楽なんだけど」
そういえばカントクは日々、部員の現在の状況をデータ化して管理していると言っていました。
実際のデータがどんなものかまでは、詳しくは知りませんが、試合に向けての作戦や、練習メニューを考える為のもの…らしいです。
実物を見たことのない僕には、そうですか…としか言えなかったんですが、その途端、
「あーもー。どっかに入力だけでもやってくれる子いないかなあ」
「………」
「一年生の部員に試しにやってもらったことあったけど、ぜんっぜん駄目だったし」
遅い上にミスが多くて散々だった、とカントクはぼやいてますが、僕は初耳です。
僕も一年ですが、そんなこと、一度も頼まれたことがありませんでした。