第3章 青色~青峰~
こいつに『バカ』って言われても(不思議と)腹も立たねーけど(ほかの奴はもちろん別だ)、俺はそうでも、こいつは当然怒っちまってるっつーか、俺が怒らせちまったわけで。
俺を前にすると、こいつはすぐに怒る…なら、まだマシか。
いつだって、できれば関わりたくないっつー空気をガンガン出してやがる。
分かってんのに近寄る俺も俺だけどよ。
しょうがねえだろ。
特に今のなんて不可抗力っつーか、お前が……。
って思ってる俺の耳に。
(何だ?バスケ?)
リングがボールを弾く音がする。
それも、すぐ近くだ。
俺が聞き違えるわけがねえ。
思い切りリングを弾くボールの音、だが今は別に用もねえ。
だから、ただそれだけで終わるはずだったが。
何度目かの、同じ音が続いた後(しかも何度も外したってわけだよな、ヘタクソが)よりにもよって路地の入口にいる俺達…正確に言えば、よりにもよって△△目掛けてボールが飛んできやがった。
軽く弧を描くようなもんじゃねえ。
リングに弾かれたせいでボールが加速してやがる。
「「「……っ!」」」
気づいたのは俺とテツはほとんど同時。
△△も、ちょっと遅れて気がついたみたいだったが。
その瞬間、俺は何も考えてなかった。
ただ無意識で、気が付いた時には△△を片腕で自分の懐に閉じ込めながら、もう片方の手で飛んできたそいつキャッチしてた。
難なく受け止めたものの、球威は思ったよりそれなりだった。
無意識とはいえ、こいつ(△△)を懐に囲っといたのは正解だったな。
万が一にも俺の手がボールを弾いて、△△に当てちまうって可能性もゼロじゃねえし。
そんなドジ踏む俺でもねえが、相手も分からねえ以上、守るんなら完璧じゃなきゃ意味がねえ。
つか、ざけんなよ。
誰だ?んなふざけたマネしやがったのは?
片手で受け止めたボールに爪を食い込ませてた俺は、何となく下から…っつか、もっと間近の…って。
俺は、我ながらバカかと思うくらいに、今更気がついた。