第3章 青色~青峰~
で、そんな黒ちゃんからの珍しいお誘いに、HRが終わった途端、私は急いで学校を飛び出した。
途中、何度かコケそうになったのは、まあ、内緒。
『お前は何にもないトコでもコケやすいんだから、気をつけろよ?』
ふっ…て、昔の声が頭をかすめたけど、私はぶんぶん頭を振って、約束の場所に走った。
同じようなこと、黒ちゃんにも言われたことあるのに、何でよりによって思い出すのが『あいつ』の台詞なの…私。
昔のことだし、もう関係ないし。
別に嫌ってはない(つもり)だけど、向こうはそうじゃないって知ってるから、私からは近づかない。
ただそれだけ…だもん。
もう友達でもなくなっちゃった…っていうより、最初からそうじゃなかったし…多分。
だから、関わらない。
もう、近づかない。
って、そもそも近づく要素というか、そんな必要も、理由だって…ないし。
私は私、青峰くんは青峰くん。
昔一緒に遊んだような、あんなことは、もうきっとない。
大きくなった私達は、それぞれ進んでくしかないんだから。
無意識にそんなことを考えながら走る道は、ひたすら真っ直ぐ。
方向音痴の私でも大丈夫!っていうのは黒ちゃんメールにあった台詞だ。
「失礼だな、黒ちゃんめ」
でも、私の方向音痴は、まあ、確かにかなり…だから言われてもしょうがないけど。
「あ、あそこだ!」
見つけた待ち合わせ場所は、いつもの帰り道とは逆方向にあるマジバだった。
桐皇から家までの間にもマジバはあって、いつもはそっちに寄るんだけど、今日はこっちの…どっちかっていうと誠凛に近い方のマジバを、黒ちゃんは指定した。
昔から黒ちゃんは、何かと私を優先してくれることが多かった(それこそ遊びの約束とか、待ち合わせ場所とか)。
だから黒ちゃんの今回の指定は珍しかったけど、会ってみたら、その理由はすぐに分かった。
それは…火神くんの足、だった。
彼は今、足を痛めていて、できればあまり歩かせないようにしていること。
このマジバを指定したのは、そんな火神くんの丁度帰り道の途中にあって、負担を掛けずに済むこと。
違う高校の、しかも試合で当たる確率大の桐皇に通ってる私に、だけど黒ちゃんは、そんな全部をあっさり教えてくれた。