第3章 青色~青峰~
分かってっけど、あんまり自然すぎるのが、逆に俺をイラつかせた。
友達同士で回し飲み…なんてやってる奴は幾らだっているし(俺だってするし)、あんなのどうってことねえって頭じゃ分かってる。
分かってんだけど。
一瞬また、ちら、とこっちを見た気がする、テツの動きが気に入らねえ。
(ワザとかよ!?)
そこにいるのが△△だったってのと、恐らくわざとっつーより、何のつもりか知らねえが、ぜってえ確信犯でやってやがるテツを見てたら、俺は……。
俺は、気が付いたら奴らの前にいた。
「よお、テツ」
「こんにちは、青峰くん」
しれっと頭を下げたテツに、俺はまたイラっとした。
まるで今気が付いたみたいな顔しやがって。
俺はテツを睨みながら、△△のことも、つい、軽く睨んじまった。
大体、こいつ(△△)もこいつだ。
テツと、んな真似しやがって…って思った俺は、今の今まで考えつかなかったことに気がついた。
今では大分マシになったっつっても、相変わらず人見知りが残ってるのが見え見えな△△が、テツにはこんだけ平然としてる理由…つったら……。
こいつら…まさか……。
(つき合ってんのか?)
面白くもねえ憶測だが、ありえなくもねえ。
そもそも今の俺と△△は、お世辞にも親しくなんかないんだからよ。
俺の知らないとこで△△が別の男と付き合ってたとしても、別に何もおかしかねえ。
その相手が、たまたまテツだったってのは、笑えねえが。
まだ確定もしてない予想に、俺は自分の顔が引きつるのが分かる。
そんな俺を見透かしてやがるのか、テツは何でもなさそうに話しかけてきた。
「こっちのマジバに来るなんて、珍しいですね」
「るせえな、たまたまだよ」
確かに、この店は家とは逆方向だ。
いつもの俺なら、まず来ねえ。
同じマジバに寄るんなら、帰り道の途中にある方の店に行く。
けど、それを言うんなら。
「そっちも同じじゃねえのか、△△」
俺が来てから黙りっきりの△△に(火神の奴は一人で騒いでやがるが、無視だ無視。今はてめえの相手してるほど暇じゃねえんだよ)、俺はわざと話を振った。