第3章 青色~青峰~
しかも、よく見てみりゃ…って、見なくても、△△の正面にテツ。
で、その隣には赤い頭…火神までいやがる。
(あいつら…知り合いだったのか)
俺の視線の先では、何だか知らねえが三人で笑って…そうかと思えばジャレるみてーに何かを言い合ったりしてるのが分かる。
(つか、火神!△△に触ってんじゃねえ!)
△△の頭に手を置くように触る赤頭野郎が気に入らねえ。
けど、無性にイライラするが、ここで俺が入ってくってのはさすがにねえだろうし。
まして、あそこに俺が入り込む余地がないのも、分かってる。
なのに俺は、そこから動けなくて。
そんな俺に三人の内の一人が、気づいた。
「ちっ……」
その一人ってのは、もちろんテツのヤローだ。
こういう場面に限ったことじゃないが、あいつは目端が利くし、俺とは違う意味で勘も良い。
だからまあ、んなとこに突っ立ってたらバレて当たり前だったんだろうが…なんつーか、どうもバツが悪い。
偶然通りかかった…なんつったって、ウソが見え見えだ。
だが、まあ。
それしか言い訳が思いつかないってのも事実なんだよな。
それなら…どうせ何したとこでワザとらしくなっちまうってんなら、このまま何でもなさそうに通り過ぎちまえば良い。
それが一番面倒がねえ。
そう考えた俺は、そのまま店の前を通り過ぎるように身体の向きを変える。
離れていく視界の端に映っていたテツも、そんな俺から視線を外した。
それは別に良い。
ここで呼び止められた方が、よっぽど気まずいしな。
けど、このまま離れる予定だった俺をもう一度立ち止まらせたのは、そんなテツの行動だった。
視線が反れて、俺の身体の向きが変わる。
そんなぎりぎりの視界の隅で最後に見えたものに、俺は目を見開いて固まった。
(てめっ、何してやがんだ!)
思わず出そうになった声を、俺はどうにか呑み込む。
だが俺の目の前(テツのせいでまた店に身体が向いちまった)で繰り広げられてたのは、△△とテツが互いのカップ(テツが飲んでんのは間違いなくいつものバニラシェイクだろうが)を交換して飲むって光景だった。
まるで当たり前みたいに、二人で交換して一口飲んで、何かを言い合ってから、またそれを相手に返した。
別に…その程度のこと、いちいち騒ぐことじゃねえって分かってる。