第3章 青色~青峰~
こうして屋上にいると、ついこの前まで涼しかった風が段々温くなってきてるのが分かる。
じきに、夏が来る。
練習なんざ相変わらず出る気はねーし、興味もねーけど。
「IH…か……」
IH予選はとっくに始まってる。
俺は…その予選にも、まあ出たり出なかったり。
そうこうしてる内に、次は決勝リーグだ…って、そういや、さつきの奴がうるさく言ってやがったな。
決勝リーグともなると、さすがに出ないわけにもいかねえか。
それに、決勝リーグには誠凛も出てくる。
「誠凛……。テツと、あいつか……」
テツの新しい光…『火神』……。
奴とは一度1on1したが、結局、相手にもならなかった。
少しは楽しめるかと思ったってのによ。
「テツの目も曇ったってことか……」
何となく口にした自分の言葉にムカついて、俺はその場に起き上がった。
屋上の柵越しに見下ろせば、校門が見える。
そういや、丁度下校時間だ。
いろんな奴が下を歩いてくのが見えた。
「俺も帰るか」
ダルく洩らした、その時だった。
見覚えのある奴が、走ってくのが一目で分かる。
「あいつ…△△……?」
遠目だろうが、間違いねえ。
ありゃ、△△だ。
しかも何だか知らねえが、随分と急いでやがる。
「んなに走ったら、また……」
コケんだろーが、って言う前に、
「ば……っ」
屋上にいる俺にどうこうできるわけもねえのに、つい反応しちまうのは、やっぱ△△だからか。
そんな俺の視線の先で、△△は何かに蹴躓いて…けど、どうにかコケずに踏みとどまりながら、立ち止まった。
「あのバカ……」
見てるこっちの心臓に悪いぜ。
それなのに、あいつはまた走り出した。
しかも、あの方向は……。
(家と逆じゃねえか)
そう感じると同時に、俺は屋上を後にした。