第3章 青色~青峰~
私とあーちゃんの一応の定位置は、教壇からちょっと離れた窓際…だったりするんだけど。
それも実は講義の場合だけで、前回のデッサンみたいな実技になると好きな場所に移動して描いてOK、なので、美術の席順なんて、ほとんどあってないようなもの…かもしれない。
でもまあ、今日は普通に講義の予定だし。
一番後ろの席に陣取ってる青峰くんは、もちろんスルー…ってことで、私とあーちゃんは一緒に彼の前を通り抜けた(一番後ろにいるから、どうしても前を通らないといけないんだよね)。
っていうより、通り抜けようとした…んだけど。
そしたら。
「………おい」
丁度、青峰くんの前を通り過ぎかけた時に声がした…ってことは、私に声を掛けたってことだよね…とか深く考える間もなく、私は反射的に立ち止まってしまった。
青峰くんの声が何だかちょっと、迷うみたいな言い方だったように感じるのは、私の気のせいなのかな。
なんて思ってる自分に、私は、はっ、とした。
(何で反応してんの、私!?)
そもそも、私に話しかけたんじゃないかもしれないのに。
って思っても、もう遅くて、けど一緒に立ち止まってくれたあーちゃんは、そのまま私の隣にいてくれた。
それだけでも、私にはすごく心強い。
でも、だからって青峰くんに返事するわけでもなく(だって私に話しかけたんじゃなかったら、それこそマヌケだし)。
振り向くでもなくて。
ただ立ち止まったままの私は、ここからどうしよう、って迷ってたら。
「……△△…」
「………へっ!?…」
間違いようもなく、今度はしっかり名前を呼ばれた私はびっくりしすぎて、声が裏返ってしまった。
だけど青峰くんは、それを弄ろうとはしてこなかった。
振り向く私の前で眉間を寄せながら、また何かを言おうとした…ように見えた、その時、
「あー!青峰くんだ!すごーい、今日はちゃんと来たんだねー!」
元気が良いというか、テンションが高めというか。
聞き覚えのある声と、それから同時に現れたその人の登場に、それまで漂っていた微妙(?)な空気が一変するのが分かった。
「すごいすごい!」
現れたその人…長いピンクの髪をした、確か…そうだ。
桃井さんは、すごく嬉しそうに青峰くんの傍に駆けてきた。