第3章 青色~青峰~
あーちゃんは、私とは全然違って、すっごく絵が上手。
ホント、憧れちゃうなあ…なんて、私はあーちゃんの肩に頭を乗せて甘えてた(他の友達にはこんな風にできないんだけど、あーちゃんは一番の仲良しだからか、いつの間にかこんなこともできるようになった)。
けどそうしてる間に、他のみんなは美術室を出て行っちゃって、私達もそろそろ行かないとね、って、あーちゃんと席を立った時、だった。
どうしてそっちを振り返ったのか、自分でも分からない。
けど何となく、目が向いて。
そしたら、そこには、
「…………っ」
「………………」
青峰くんが、無言でこっちを見てた。
傍には桃井さんもいなくて、青峰くんは一人でそこにいて。
だけどすぐに目を反らして、青峰くんは美術室を出ていってしまった。
それを見ていた私の肩に、今度はあーちゃんが顔を乗せてきて。
「今の、見た?」
「うん」
「睨まれた」
「え?」
青峰くんがこっちを見てたのは、私も分かったけど。
「睨んでた?」
そうだったかな。
睨まれてた自覚なかったけど……。
そう言ったら、あーちゃんは。
「違うよー。青峰くんが睨んでたのは○○ちゃんじゃなくて、私の方」
「青峰くんが、あーちゃんのこと?だって、別に何にもしてないのに?」
「うん。してない…っていうか、喋ったこともないよ、あの人となんて」
それなのに、何か一瞬すんごい目で睨まれた、ってあーちゃんは言うんだけど。
私の目には、その瞬間が見えてなかったせいか、よく分からない。
それに青峰くんは普段から、あんまり目つき良くないし…っていうのは、偏見かな。
だけど、あーちゃんがそう言うなら、そうなんだろうなって思った。
あーちゃんは、そんな嘘なんか吐かないし。
「何だろうね、機嫌悪かったとかかな」
「んー……」
よく分からないなりに呟く私に、あーちゃんは唸るみたいに天井を眺めて首を傾げた。
「あーちゃん?」
「あ、ごめんごめん。何でもない。気のせいかもしんないし」
「何が?」
「まだよく分かんないんだ。けど、分かったら教えてあげる」
「? うん。あ、でも、もし何かあったら、ちゃんと言ってね!」
正直、青峰くんが女の子に何かするとは思えないけど。