第3章 青色~青峰~
私が先生に言われたのは、青峰くんを捜してくるってことだけ。
その後、彼がどうしようと私には関係ない。
けど、そんな私の視線の先では、あの…例のピンクの髪の子が、しきりに青峰くんに何か言ってるみたいだった(ひそひそしてて何言ってるかは分かんないけど)。
そういえば、あの女の子、どっかで見たことあるような気がするんだけどな。
自慢じゃないけど、私、人の顔とか名前覚えるのって苦手なんだよね。
友達とか、自分の身近な相手だったら、割とすんなり覚えられるんだけど。
普段ほとんど関わりがなかったりすると、同じクラスの子でさえ、『こんな人いたっけ?』なんて、かなり失礼な展開になっちゃうことが、実は今までもあったり…なかったり……。
だから、あの子も、もしかしたら何処かで…とか思いつつ、ついじっと見ちゃってた自分に気がついた私は、慌ててそこから目を反らした。
そうしたら、そんな私に気がついたのか、隣からあーちゃんが耳打ちしてきた。
「あの人、確か桃井さんって言ったかな」
「桃井さん?」
「うん。青峰くんの幼馴染みなんだって。帝光中出身の子から聞いたことあるよ」
幼馴染みで、しかも帝光中男子バスケ部の元マネジャー。
今では、二人は付き合ってるって噂もあるらしい。
(そっか……)
私は、ちょっと納得した。
二人が付き合ってるかもって噂は知らないけど(大体、私はそういう噂にはちょっと疎かったりするし)、バスケ部のマネージャーだったら、私も見かけたことがあったのかもしれない。
帝光中のバスケ部は超強豪…っていうより、常勝チームな感じで、全中の試合とかも見に行ったことがある(たまたま試合が週末だったりすると、みんな応援に行くようにって先生に言われたんだよね)。
(だから、どっかで見たような気がしたんだ)
なるほど…なんて、ちょっと謎が解けた気分で、私はデッサンに集中し直した。
けど…まあ、苦手なものは、どうにもならなかったりするんだけど……。
「一応…描けた、けど~~~っ」
あまりなダメさ加減に、私はチャイムと同時にあーちゃんに抱きついた。
「こんなんだったら、まだ書道のがまともにできたかなあ」
凹む私の頭を、あーちゃんがぽんぽん、ってしてくれる。
「よしよし。そう落ち込まないの。ちゃんと描けてるじゃん」
「全然ダメだよ、もー」