第3章 青色~青峰~
-○○side-
自分の席に戻ると、隣の友達…『あーちゃん』(本名は暁っていうんだけどね)が『お疲れ様』って言ってくれたのは良かったんだけど。
「青峰くん、見つかって良かったね。でもよく連れて来れたよね、○○ちゃんすごいよ」
なんて言われちゃったら、ちょっと返事に困った。
居場所は、実は教えてもらえたお陰なんだよって、簡単に答えられたけど、青峰くんを連れてきたのがすごいって言われても……。
(すごく…はないんだよねえ)
だって本当は、あのまま青峰くんを置いて戻ってくる気だったし。
『それじゃ、ごゆっくり』
捨て台詞吐いて、一人で戻ってくるつもりだったんだもん。
けど、何だか知らないけど、あっちが勝手に来る気になったっていうか……。
「ただの気紛れじゃない?青峰くんの」
「そうなの?」
「んー、多分。だって私なんかの話、聞くわけないじゃん」
クラスも違うし(今はたまたま選択授業だから一緒なだけで)、喋ったことだって、小学校のあの時以来ないし。
大体、向こうは私のことなんてとっくに忘れてるかも…って思いかけて、私はここに来るまでの青峰くんの言葉を思い出した。
『そうじゃなくても鈍クセーくせに』
『お前は分かりやすいんだよ、大体、昔っから……』
何も喋るつもりなんてなかったのに、何か言われるたびについ反応しちゃう私に、青峰くんはそう言ってた。
それって……。
(覚えてるって、こと……?)
私のことも、他のことも……。
『あの時』の、ことも……?
分からない。
それに、もし覚えてたとしたって、別に何の意味もない。
全部ただの思い出で、全部が済んだことなんだから。
いつまで気にする意味なんて、それこそ何処にもない。
実際、久しぶりに間近で見て…そして喋った青峰くんは、昔とは全然違ってた。
それだけ大人になったんだから当たり前だろうし、私だってきっと、あの頃とは変わってる。
自分では分かんないけど、まあ…多分。
青峰くんを捜しに行ってた分、みんなより遅れちゃったデッサンを慌てて描きながら、私はそんなことを考えながら、ちらっ、と青峰くんの方を見た。
絵を描く気がないのか、椅子に座ってぼーっとしてる。
あんなんじゃ、せっかく授業に出ても意味ないんじゃないの…とかうっかり思いかけるけど。
(私には関係ないし)