第3章 青色~青峰~
△△も、それっきり何も言わずに先に進んでいく。
それからすぐに着いた美術室のドアを開けて、△△は中に入った。
俺も後に続いたが、入ってすぐのとこで、△△のテンポが少し落ちる。
(何だ?)
妙に思った俺は、その理由にすぐ気がついた。
入口近くの席に、さつきがいやがった。
しかも何故かあいつが、△△にひらひら手なんか振ってやがる。
△△はそれに反応したらしい。
こいつらが知り合いなんて、知らなかったぜ。
「良かったね」
小声で話すさつきに、△△が複雑そうに頷くのが分かった。
「あ、うん。ありがと……」
何か、妙な空気感だ。
知り合いっつーより、こいつは……。
そういや、△△は俺が屋上にいるなんて知らないはずだ。
ってことは…何だ?
もしかして、さつきの奴が△△に教えた…ってより、あいつが勝手に△△に吹き込んだ、って方が当たりか?
(さつきの奴なら、やりかねねえしな)
出しゃばりな真似をしてくれたらしい幼馴染みにうんざりする俺をよそに、△△はいつの間にか、俺を見つけて連れてきた報告を済ませて、とっとと自分の席に戻っちまった。
で、俺はっつーと、その場でかるーく説教受けて、それから空いてる席(これがまた、さつきの傍ってのがどうなんだよ)に適当に座った。
よく知らねえが、今日はデッサンをするらしい。
「何だ、水彩画じゃねーのか」
ほとんど無意識にぼやいた俺に、傍にいたさつきが反応する。
「え?青峰くんて、水彩画好きだっけ?」
「うるせえよ、お前には関係ねーだろ」
俺はさつきを突っぱねた。
別に水彩画が好きとか、そんなんじゃねえ。
ただ、あれなら『絵の具』使うよなって、何となく思っちまった。
それだけだ……。