第3章 青色~青峰~
目の前でちょろちょろされた日にゃ、それこそ手が伸びちまいそうだ。
「またコケんなよ」
「だ、だれがっ!」
からかうみたいに口先だけで△△を弄ったら、拗ねるみたいな声が返ってくる。
こういう喋り方をする時のこいつは、昔だったら、ちょっと顔赤くしてたもんだよな。
ま、ガキの頃の話だけど。
それでも気になって、ちらっと後ろを見てみたら、やっぱり。
(大正解…ってか)
大体、嫌なら俺の台詞なんざ無視すりゃ良いのによ。
俺の言葉に反応するわ、拗ねて赤くなるわ…って、こいつ、マジで。
だから、そーゆーのが、アレなんだよ。
(こんな時に可愛いとか、思わせんじゃねーよ!触りたくなんだろが!)
って、何なんだ、俺は!
んなことしたら、それこそアウトだろーが!
俺は極力こいつのことを考えないようにしながら、階段を駆け下りかけたが。
(あ、ヤベーか)
こいつを急がせたら、またコケんぞ、絶対。
そうなると、早足ってわけにもいかねえし、こいつはついてこれなくなる。
俺は速度を落として、けど△△を見ないようにしながら、先を進んだ。
これで美術室まで行きゃ、とりあえず問題はねーだろ、って思った俺は甘かった。
(ん?美術室って、何処だ?)
そういや、あんなとこ、行ったことねーし。
そんなわけで俺的作戦(?)失敗。
「おい、美術室って、何処だ?」
結局△△に振り返った挙句、美術室の場所を訊くとか…ダメだろ、俺……。
けど…俺は決めた。
腹を括った、つか、答えはとっくに出てた。
今はこいつに嫌われたままでも。
ぜってー、お前をつかまえる。
(他の奴になんざ渡さねえから、覚悟しとけ)
俺の考えてることなんて、もちろん知るはずもねえ△△は、滅茶苦茶分かりやすい呆れ顔をしながら、俺の前に出た。
そのあまりの分かりやすさに俺は、
「お前、今…呆れてんだろ」
目の前に見える、俺よりずっと小さな背中に、わざと言葉を放り投げた。
まあ、けど、
「そんなことないよ」
予想通りっつーか、返ってくんのはそんなとこか。
けど、お前、バレバレなんだよ。
「そんなことあんだろ。お前は分かりやすいんだよ、大体、昔っから……」
つい昔のことを言いかけた俺は、口を噤んだ。