第3章 青色~青峰~
小学校の時、△△のことで奴らに言われたのは図星だった。
『もしかして△△のこと好きなんじゃねーの?』
だから尚更、ガキだった俺は頭に血がのぼっちまったんだ。
けどガキの頃の『好き』と今とじゃ、ワケが違う。
そんなもん、誰だって分かんだろ。
俺だって…分かる。
つか、嫌ってほど、実感してる。
今はもう、ただ手ぇつないで、一緒に遊んで、それで満足ってんじゃ、ねーんだ。
だからガキの頃の『好き』が、デカくなってからの『好き』につながるとは限らない。
ガキだったあの頃の俺が、あの頃の△△を『好き』でも、今の俺が、今のあいつを、ガキの時とは違う意味で『好き』になるとは限らねえわけだ。
けど…これが、な。
(ほんっと、嫌んなるぜ)
いい加減忘れちまえって思っても忘れらんねえ。
放っときゃ良いって思ってもできねえ。
近づけねえくせに、完全に離れちまうこともできなくて、△△の姿を見かけちゃ、いつも目で追ってた。
気になって…俺の中に勝手に住み着いて、もうどうしようもねえんだ。
△△が俺を見なくても、デカくなった俺達は、もうお互い、あの頃とは色々変わっちまってるんだって分かってても。
近づけなくなっちまってからもずっと、俺は△△が『好き』だった。
話せなくても、近づけなくても、昔みたいに頭かき回して弄るなんて、夢のまた夢になっちまっても。
俺の一番中心にいるのは…△△だ。
これじゃまるで純情少年か何かかよって、自分を嘲笑ったのも一度や二度じゃねえ。
けど、どうしようもねえんだから、しょうがねえ。
それが…偶然でも、何年振りかで△△に触れた。
(足りねえ)
中途半端に触れちまったせいで、物足りなくて仕方ねえ。
△△が足りねえ。
(全然足りねえよ)
けど、目の前のこいつにとっちゃ、俺のことなんざ知ったこっちゃねえだろうしな。
第一、さっき喋ったのだって、何年振りだよってもんだ。
『邪魔なんだよ!』
あんなバカ発言をかました俺が、こんな風に△△を見てるなんて、本人はそれこそ夢にも思っちゃいないんだろう。
だから俺は、屋上からの階段をわざと先に下りて、自分の目に△△が映らないようにした。