第3章 青色~青峰~
そういや昔…よく一緒に遊んでた頃、俺はしょっちゅうこいつの頭に触ってたっけな。
あの頃は、まだそれほど身長差はなかったが、それでも何となく手を乗せやすかったっつーか。
触り心地が良かったんだよな。
頭に手を乗せたり、ぽんぽん軽く叩くみたいにしてみたり。
中でも一番面白かったのは、
『やー!もー!ぐちゃぐちゃにしないでー!』
怒って騒いで逃げ出すくらい、△△の頭をかき回すってやつだ。
ただし、やりすぎるとマジギレして、あいつは大騒ぎしやがるから、弄り加減は要注意ってやつだったけど。
背も、頭も…成長したってホント、俺よりずっと、ちっせえ。
固まって動かないまんまの手も…こうして見てみりゃ相変わらず小さいし、俺と違って白くて細っこくて……。
昔…これはマジで数える程度だが、しょっちゅうコケそうになるこいつが危なっかしくて、ほとんど無理矢理、俺が手を引いたことがあった。
『ちっちゃいな、手』
『そうかなぁ?』
『そうだよ。それに、ぷにぷにしてる』
『ぷにぷに?』
小さくて柔らかいこいつの手に、俺はそんなことを言ったのを覚えてる。
あの頃は、当たり前みたいに隣にいた、△△……。
今も触ったら、相変わらずやわらけーのかな、なんて、つい考えちまうけど。
さすがにそれはな…って、俺だって分かってる。
けど……。
(触りてえ……)
変な意味じゃなくて…いや、そういう意味もまあ、ないとは言わねーけど、こいつの傍で、こいつに触りたい。
こんなに近くにいたら、マジで我慢できなくなりそうだ。
けど、幾らこいつがぼーっとしてても、んなマネしたら、さすがに騒ぐだろうし…ってな感じに、俺がごちゃごちゃとらしくもなく考えてたのは、多分時間にしたらほんのちょっとの…まあ、数秒程度だったんだろう。
俺の腕の中で、いきなり△△の肩が跳ねるのが分かった。
「ひゃぁっ!?」
今になって、△△はやっと自分の状況が分かったらしい。
俺から離れようとして、せっかく支えてたってつのに、こいつの身体はまたバランスを崩しそうになる。
「おい、暴れんな!」
っつっても、こいつは俺の言うことなんか、聞きゃしねえ。
「やだってば!」
暴れる△△の膝が崩れかけて、ここで俺の手が離れたら、こいつはそのまま床にへたり込んじまう。