第3章 青色~青峰~
「いないよね、やっぱ」
確かめるみたいに△△が言ったのが聞こえて、それまで聞き流してた俺は、無性にイラついた。
あいつと俺は、もう何の関係もない。
(知ったこっちゃねえ)
頭ではそう思うのに。
『あの子でしょ、△△さんて。もっと自分に素直にならないと、何にも伝わらないよ?ほら、私みたいにさ』
『お前は態度に出しすぎなんだよ!ってか、そもそもテツに伝わってんのか?』
『ひどーい!それを言わないでよー!』
『だったら誠凛に行きゃ良かったろーが』
『だって青峰くん、こんなだしさ。放っておけないじゃん』
『余計な世話なんだよ』
『△△さんみたいな子が青峰くんの傍にいたら、私だって青峰くんなんかほっぽっちゃうのにー』
桐皇に入ってすぐの頃の、うるさい幼馴染みとの会話が頭に響く。
(さつきの奴、言いたいこと言いやがって)
ほんの一瞬、そんなことを考えてる間に、すぐ下であいつの足音が聞こえた。
あいつが、ここからいなくなろうとしてる。
『素直にならないと』
(んなこと、できっかよ!)
けど……。
「俺なら、ここにいるぜ?」
このままあいつを行かせたくなくて、気づいた時には、俺はそんなことを口走ってた。
んで、一度口走っちまうと、なんつーか、こういう言い方したら、あいつきっと怒んだろうなって言い方ばっか、わざとしちまう辺り、俺も大概ガキだと思うぜ。
けど止まらねえ、ってか、止めらんなかった。
だってよ。俺の台詞に、あいつは律儀に返事してくんだ。
俺のこと、嫌なくせに…な。
それが妙に面白くって、らしくねーけど楽しく感じて、こういうのも確信犯ってのかは知らねえが、こんな風にあいつと喋ってるのが、なんつーか、上手く言えねえが、心地好かった。
けど、ま、さすがに限度…ってより、あいつにしてみりゃ、俺の相手なんざ、いつまでしていたくもないんだろうな。
「それじゃ、ごゆっくり」
捨て台詞を吐いて、あいつは今度こそ屋上を出て行こうとする。
離れていこうとするあいつの気配に、俺は我慢できなかった。
「ちっ、くそっ!」
自分で自分に毒づいて、そのすぐ後には、俺はそこから飛び降りてた。