第3章 青色~青峰~
-青峰side-
屋上のドアが開いた時、完全無視を決め込むはずだった。
俺がよくここにいるってのは、さつきを含めてほんの一部だ。
けど、そのどれも部活の連中だし、一応、授業中って時間に、ここまで来る奴の相手なんてしてられるかって思った。
まあ、さつきの場合、俺が無視してもここまで上ってきちまうが。
それでも無視して動かねえことなんて、それこそしょっちゅうだ。
幼馴染みだろうが何だろうが、そんなこと、俺にはどうでも良い。
だから誰が来ようと関係ない。
俺は仰向けになったまま、ぼんやり空を眺めてた。
だが。
「青峰くん…いる?」
聞こえた声に、俺は無意識に反応した。
いつの間にかうとうとしかけてた目が開いて、そのまま跳ね起きそうになった…が、それはどうにか押さえながら、下をうろうろするあいつ…△△を、俺は寝転んだまま目で追った。
声だけで△△だって分かっちまう自分が笑える。
けど実際、一瞬で俺は反応しちまった。
それでも、まさかと思って見てみれば、やっぱり間違いなかった。
にしても。
(何で、あいつがここにいんだ?)
何の授業だったかは忘れたが、とにかく今は授業中のはずだ。
それなのに、真面目なあいつがこんなとこに来るなんて、おかしいだろ。
あいつは、俺がこんな風に思ってるなんて知らないだろうが、俺はあいつが真面目で、結構責任感のある奴だって知ってる。
ああ、それからついでに、引っ込み思案のせいで最初は気づかなかったが、馴染んじまえば、実は結構意地っ張りだったり、気が強いとこがあったり。
そのくせ、ちょっと怖がりだったりしたっけな。
そういう面を知るたびに、それが面白くってからかって、弄ってたんだよな、俺。
で、必ず逆襲されたけど(子供だから力加減が分からなかったってのを差し引いても、あれで結構狂暴なんだ、あいつは)。
小学校の頃も、中学に入ってクラスが違っちまっても、俺は何となく、いつもあいつが気になってた。
だから…それくらいなら、分かってる。
(ま、ただ何となく…だけどな)
なのに、そんなあいつが今ここにいる。
(何かあったのか?)
気になった。
どうかしたのか、って、反射的にそう思っちまったけど。
(だからって、な……)
普通に訊けるわけがねえのは、俺が一番分かってる。