第3章 青色~青峰~
いつも通ってるストバスに誰かを誘ったのは、後にも先にも△△が初めてだ。
幼馴染みで腐れ縁のさつきにせがまれたって、連れてったことなんかなかった。
でも△△のことは、何故か連れてってやりたいと思った。
小さい手にボールを持たせてやった時の嬉しそうな顔が、今も忘れらんねえ。
けど、それを見てた奴らがいた。
そいつらに、小学校の裏庭に呼ばれてからかわれて……。
『もしかして△△のこと好きなんじゃねーの?』
あの瞬間、俺の頭に血がのぼった。
今思えば…あれだ。
図星突かれた…ってやつか。
とにかく、気がついた時には思ってもないこと口走って、目の前の奴に蹴り入れて。
後ろから聞こえた音に振り返ったら…△△がいた。
逃げてく△△に、俺は声も出せなくて。
そこから一歩も、動くことすらできなかった。
それで…終わりだ。
次の日から、あいつはあからさまに俺を避けるようになった。
で、俺は俺で、そんな△△にイラついて、同じようにあいつを避けた。
あいつを傷つけたのは、俺の方だってのに……。
俺は馬鹿で…ガキ、だった……。
(ま、今でもあんま変わってねーかもな)
どっちにしろ、その馬鹿(俺のことだけど)のせいで、あれ以来、俺は△△と会話はおろか、傍に近づけもしねえ。
挙句、そのまま小学校は卒業。
中学に行ったら行ったで、クラスは違うわ、部活はあるわ……。
いや、違うな。
それも言い訳だ。
あいつに近づけない、全部言い訳にして、俺はここまで来ちまった。
あれから何年だよ?
普通、忘れちまうだろ?
気まずくなっちまった相手のことなんて、とっとと忘れちまえば良いって、俺だって何度思ったか知れねえ。
けど…駄目だ。
忘れられねえんだ。
あいつが俺に見せた楽しそうな顔も…最後に見た、凍りついたような表情も……。