第3章 青色~青峰~
-青峰side-
『あんな奴、何とも思ってねーよ!俺だって、ホントは邪魔なんだよ!』
昔の台詞を思い出すだけで、胸の辺りがムカムカしやがる。
大体、んなことあるわけねーだろ。
邪魔だったら、最初っから構ったりしねーよ。
っても、実際口から出ちまったもんは、もうどうしようもねえ。
しかもそんなとこ、△△に見られちまって。
そういやあの後、蹴り入れた奴の親が学校に乗り込んで大騒ぎになったが、そもそも俺の方があいつらに呼び出されたってのがバレたら、途端に向こうの親もおとなしくなりやがった。
俺が蹴りをかましたのも、複数の相手に俺独りで囲まれて、思わず怖くて暴れちまったってオチでケリがついた。
あの頃の俺は、自分で言うのも何だが、まだこんなじゃなかったし、さすがに喧嘩慣れもしてなかったからな。
ま、だからって、あいつら程度に囲まれて、ビビる俺でもなかったけど。
そんなことより、あの時の俺の頭ん中には、あいつにあんな台詞を聞かれちまったっていう苦い気持ちしかなかった。
△△と初めて喋ったのは、いきなり後ろからあいつが話しかけてきた、あの時だ。
それまでは前と後ろの席っつっても喋ったこともなかったし、そこにいようがいまいが、気にしたこともなかった。
それが、何だか知らねーが、絵の具一つ借りるのに、泣きそうな顔して話しかけてきた。
『あ、あの…えのぐ…かして、くれる……?』
『うん、良いよ。何色?』
『あっ、えっと……あお……』
元々席が前後だったせいもあって、それから少しずつ、俺たちは喋るようになった。
それで分かったのは、△△が結構な人見知りで、引っ込み思案だってことだ。
ああ、だから今までは席が近くても全然喋らなかったんだなって、妙に納得したのを覚えてる。
けど段々、あいつは俺に慣れてきて。
たくさん喋って、それから笑うようにもなって。
初めてあいつが笑うとこ見た時、ああ、こいつってこんな風に笑うのかって思った。
もっと笑わせてみたいって、そう思った自分を…俺は今も覚えてる。