第3章 青色~青峰~
こんな青峰くんを見たのは、私は初めてだった。
私の知ってる青峰くんは、いつも笑ってて、楽しそうで、優しかったから。
だけど、この時の青峰くんは違った。
蹲って泣き喚く男の子を見下ろして、青峰くんは怒鳴り散らした。
『あんな奴、何とも思ってねーよ!俺だって、ホントは邪魔なんだよ!』
『………っ!』
がたっ!
青峰くんの声に驚いた私は、傍にあった倉庫の壁にぶつかってしまった。
そして、驚いたように振り返った青峰くんと目が合った途端、私はそこから逃げ出した。
何処をどう走ったかなんて、今も覚えていない。
気がついたら、ぼろぼろに泣きながら家に帰っていた。
そんな私を見た母はしきりに心配してくれたけど、私は最後まで何も言わないまま。
次の日から、私は青峰くんに近づかなくなった。
そんな私に、青峰くんも何も言ってはこなくて。
それきり…私は青峰くんとは、ほとんど喋らないどころか、近づかなくなった。
それに青峰くんも、そんな私に近づいてくることはなかったし。
そのまま小学校を卒業して…中学校に入れば、尚更彼との距離は離れる一方だった。
バスケ部に入ったらしいって噂を何となく耳にした時には、ストバスしてた青峰くんをちょっとだけ思い出したりもしたけど、それだけだ。
その後のことなんか知らないし、興味も持たないようにした。
帝光中バスケ部が全中で連覇したとか、その中で青峰くんの名前が聞こえてくることもあったけど、私には関係ない。
(関係ないもん)
そう思うのに、完全に気持ちを閉じてしまえないのは、どうしてなんだろう。
全然近づいたりしてないし、喋ってもいない。
それなのに…そこにいるだけで目立つ彼は、偶然すれ違うだけで視界に入ってくる。
でも私は、その度に気づかない振りをした。