第3章 青色~青峰~
-○○side-
その年の春。
桐皇学園に合格した私は、入学式早々、目を疑った。
幸いクラスは違ったけど、離れてても分かる印象的な容姿と、あの長身が、見ようと思わなくても目に飛び込んできてしまう。
(何で…何であいつがここにいるの!?)
あいつ…『青峰大輝』……。
学校だけでいうなら、小・中学校を通じて一緒だった。
でもまともに喋ったのは、小学校のときだけだ。
足りない絵の具…でも引っ込み思案で、誰にも借りることができない私……。
その時、最初に声を掛けてくれたのは、後ろの席の男の子だった。
でも、いざ絵の具の箱を開けてみると、その子も私の欲しい絵の具を持ってなくて。
それならと、その子は私の前の席へ声をかけるよう、背中を押してくれた。
躊躇う私に、
『大丈夫』
そう言ってくれた、その優しい男の子の名前は…綾戸くん。
そして、勇気を振り絞って声を掛けた私に、笑顔で絵の具を貸してくれたのが『青峰くん』だった。
その日をきっかけに青峰くんは、何かと引っ込み思案な私に話しかけてくれるようになったり、一緒に遊びに誘ってくれるようになった。
大人と混ざってストバスをしてると言って、連れて行ってくれたりもした。
下手な私に、嫌な顔もせずにボールの持ち方から教えてくれたのは、青峰くんだ。
私は毎日が楽しくて楽しくて。
一緒にいて、本当に楽しいと思える友達がやっとできたと、そう思った。
これからもこうして楽しく過ごしていけると、そう思ってた。
だけど、それはある日、簡単に壊れた。
それは、偶然通り掛かって耳にしてしまった、クラスの男子達の会話。
『お前、最近しょっちゅう△△と一緒にいんじゃん?』
『女と二人でさー。もしかして△△のこと好きなんじゃねーの?』
『そんなんじゃねーよ』
『それに青峰ってさ、桃井とも仲良くなかったっけ?もしかして二股ってやつ?』
『うわー、やらしー!』
『ちがうっつってんだろ!』
『青峰くーん、とか呼ばれちゃってさ。嬉しそうじゃーん』
『うっせーんだよ!』
どかっ!
声を荒げた青峰くんが、一人の男子を思い切り蹴り飛ばした。