第2章 水色~黒子~
でも言った傍から、(また)顔が火照るのが分かる。
それを黒子くんに気づかれるのが嫌で(っていうより恥ずかしくて)下を向いたら、足元に見える黒子くんの影が、何だかさっきより近づいた気がした。
でも…気のせい…かも?
そのまま下を向いていたら、すぐ上から黒子くんの…いつもの穏やかな声が降ってきた。
「僕も…ありがとうございました」
「え……?」
何で黒子くんがお礼?
反射的に顔を上げた時には、黒子くんはもう、私に背中を向けていた。
「鍵は僕が閉めていきますから、△△さんはお先にどうぞ」
自分はこれから部活もあるからって、黒子くんは私を先に帰そうとしてくれた。
でも、今の黒子くんは私に背中を向けていて、表情が見えない。
それが不安なような、心細いような、私はざわざわした気持ちになった。
「黒子く……」
「今日は、楽しかったです」
「え?」
予想外の黒子くんの台詞に、私は驚いた。
だって、迷惑かけちゃったのに。
それなのに。
(楽しかった……?)
分からなくて、でも、そうしたら黒子くんが、少しだけ私に振り返ってくれて。
その表情は、確かに笑顔だった。
元々全開の笑顔なんてしない(少なくとも私はまだ見たことない)黒子くんだけど、それでも時々見せてくれる、柔らかそうな笑顔とも、何だか違う。
黒子くんをよく知ってるわけじゃないけど、少なくとも、私の知る黒子くんの笑顔と、今の笑顔は何となく違って見えた。
何処がとか、何が、とかは、自分でも分からないんだけど。
何だか、あったかい…感じ……。