第2章 水色~黒子~
『「○○ちゃん」は、嫌ですか?』
『嫌じゃないけど、だって何か、『ちゃん』付けって可愛い感じじゃない?』
『○○ちゃんは可愛いですけど』
『可愛くないし!そ、それに、そういうことさらっと言わないでよー!』
『どうしてですか?本当のことです』
『や、だ、だから…ね……』
そんなこんなで、私が『ちゃん』付けを渋ったもんだから、最終的に、テツくんは私を『○○』って呼ぶことで落ち着いたわけなんだけど(それはそれで照れくさいけど)。
そしたら今度はテツくんも、自分も呼び捨てで良いとか言い出しちゃって(最初は『テツくん』て呼んで欲しいって言ってたのに)。
『テツくん…じゃなくて?』
『○○ちゃんと同じが良いです』
『ええっ!?』
私と同じが良い…とか、テツくん、こういうとこあったんだ?
なんて、新発見してる場合じゃない。
『黒子くん』じゃなくて、『テツくん』て呼ぶのも照れちゃう私が、いきなり呼び捨てとか、そんな。
『い、いきなりハードルが高くない?』
『そんなことはないと思いますけど。それじゃぁ……』
そう言って、テツくんが出してくれた妥協案(?)に、私は頷くしかなかった。
で、その妥協案ていうのが。
『慣れてきたら、呼んでくださいね』
『ぅっ、が、がんばり、ます』
テツくんが私に向けてくれる表情も声も、本当に優しくて柔らかい。
だけど、こんな妥協案まで出してくるなんて。
(そんなに呼び捨てが良いのかなぁ……?)
って、でも、そんなの私にはまだまだ難題というか、ハードルが高いというか。
だから蒸し返すようなこと言わないでよぅ、とは言えないまま、私は友達の追及っていうより、弄りをかわすしかなかった。
でもそういえば、うっかりしてたけど。
(桜庭くんの言ってた用って、何だったのかな)
昨日、呼び止められたのを思い出して気にしていたら。
「昨日のあれ、何でもないから。忘れて」
「え?」
「用ならもう、済んだから平気」
「あ、うん」
よく分からないけど、桜庭くんから先に、そう言われてしまった。
(それなら…良い、のかな……)
何だかすっきりしないけど、本人がもう済んだって言ってたし。
さっきテツくんと何か喋ってたみたいなのが、ちょっと気にはなるけど……。