第2章 水色~黒子~
しつこく訊くのも失礼かな、なんて、考えてた私は…だけどそんな余裕も、部活に突入した途端に吹っ飛んだ。
朝の教室リターン…じゃないけど、私とテツくんが付き合うようになったのが、やっぱりここでもバレた。
というより、この場合、テツくん自ら暴露したって方が正解。
何とテツくんは、カントクが来るなり、私達のことをさらっと報告しちゃったのだ。
予想外だったのは、カントクも…それから、それを聞いてた周りも、あんまり驚いてなかったってことだけど。
だからって、もちろん、何もなかったわけじゃない。
それどころか。
「ふふーん?やっぱりねぇ」
にっこり…じゃ、絶対ない。
にや、とか、にた、とか形容するなら絶対そんな感じの笑顔を浮かべたカントクが、私の肩に寄り掛かってきた。
「や、やっぱり?」
「そ。やっぱりなーって。頑張ってたもんねぇ、黒子くん」
でも…って言いながら腕を組んだカントクに、私はデータ作業の準備をしながら、じりじり距離を取った…んだけど。
「黒子くんは『テツくん』で、私は『カントク』なわけなのぉ?」
「……はい?」
突っ込まれるとこって、そこ?
固まる私に、テツくんが助け船を出そうとしてくれたけど、伊月先輩が何故かそれを止めてて、その間に木吉先輩が私に耳打ちした。
「ほら、あれだよ、あれ。呼んでやれば、解決すると思うぞ?」
「あ、あれ……?」
「それにほら、あのままだと、○○が黒子のこと『テツくん』って呼ぶたびにヘソ曲げそうだ。それも面倒だろ?」
「はぁ……」
でも、そうは言われても……。
私は、何のこと?って思ったけど。
「名前だろ」
短くぼそっと、でもはっきり聞こえたのは、今度は部長の声。
瞬間、私は、はっとして、けどちょっと躊躇った。
そういえば、カントクから言われてからも、ずっと呼べないままだったんだよね。
だって、テツくんとは違う意味で、こう…やっぱり呼びにくいでしょ、普通?
それに、本当にこんなんでカントクの気が済むのかな……。
ちら、と木吉先輩を見ると、そこでは先輩が軽くウィンクなんてしてくれてて。
(ああっ、もう!)
どうとでもなれ!じゃないけど、私は、テツくんに対するのとは違う照れくささを抱えながら、カントクを見た。