第2章 水色~黒子~
見上げて、テツくんを目に焼きつける。
だって…明日まで、会えないから。
そう思ってたら、
「それではここで。また明日会いましょう、○○」
真っ直ぐ私を見つめるテツくんが、ほんのり染まった顔に優しい笑顔を浮かべていて。
伸びた手が、私の髪を撫でて…離れた。
優しく優しく、目を細めてから、テツくんが背を向ける。
また明日、会えるのを楽しみに……。
黒子くん…あ、じゃなくて、テツくんも、そう思ってくれてたら、良いな。
自分の気持ちから逃げようとしてた私に手を差し伸べてくれたのは、テツくんだった。
だからもう、私も逃げないから。
まだ弱くて、勇気の足りない私だけど、二度とテツくんの手を、離さないように。
そうして、その夜、私は幸せな気持ちで眠りにつけ…なかった。
「……あんまり眠れなかった……」
だって、どきどきしすぎて。
でも、一日くらい平気…だけど、丁度朝練から戻ったテツくんと廊下で出くわした途端、やっぱりというか、すぐにバレて色々心配されちゃったんだけど、よくよく聞いたら、テツくんも私と同じだったみたいで、何だか朝から二人で笑っちゃった。
だけど、ある意味、本当に大変だったのは教室に行ってから…だった。
だって昨日までは『黒子くん』て呼んでた私が、今日は『テツくん』なんて呼んでるもんだから、友達には一瞬でバレる(予想はしてたけど)。
「何、今のー」
「何でもないとか、ナシだからね」
「あ~~~」
「「白状しなさい?」」
白状させられて、弄られて、もうそれだけで恥ずかしいっていうのに。
「けどさ、黒子くんは『○○』って呼び捨てなのに、○○は『テツくん』なんだねー。呼び捨てしちゃえば良いのにー」
「あ、や、それは……」
「そうだよー。らぶらぶだねー」
「ぅあ~~~」
そんな風にからかわれて、私は頭を抱えた。
からかわれるのも恥ずかしいけど、けど!
その『名前ネタ』はちょっと、本当に……。
ちら、ってテツくんの方を見ると、さっきから騒いでる私達のことを見てたらしいテツくんと目が合っちゃって、私は真っ赤になる顔を慌てて両手で隠した。
(だからこのネタは駄目なんだってば!)
だって…これって、実は昨日ちょっと揉めた、ってほどじゃないけど、二人で話したこと、だったりする。