第2章 水色~黒子~
あったかい手が、涙でぐちゃぐちゃな私の頬を包んで、最後に、こつ、って額が当たった。
こんな状況、いつもの私だったらそれこそパニックなはずだけど、今の私はもう、ぼろぼろ泣くだけでいっぱいいっぱいで。
頬に触れた黒子くんの手を、私の涙がどんどん濡らしていく。
それでも黒子くんは、私の傍にいてくれた。
「頑張って変わった△△さんも、変わろうとしている△△さんも。そのままの△△さんも全部、僕は好きですから」
「くろ、こ…く……」
間近から吹き込まれた言葉に、私は黒子くんを見た。
涙で霞んで、黒子くんがちゃんと見えない。
だけど…見たいと思った。
ちゃんと見て、ちゃんと話したいって、思った。
私は、こんなだけど……。
勇気がなくて、意気地がなくて、私は自分の気持ちから目を反らそうとするばっかりだったけど。
そんな私に、黒子くんは…言ってくれたから。
(私も…ちゃんと……)
ちゃんと、言いたくて。
(言わなくちゃ……)
「くろこ、く…っ、私…も…す、き……っ」
遅いけど、ダメダメだけど。
それでも…こんな私でも、良い?
音にできない気持ちを込めるように、私はやっと、それだけを言葉にした。
ちゃんと伝えてくれた黒子くんに比べたら、私の言葉なんて、本当に駄目だけど。
少しでも…伝わりますように。
そう、祈って。
「くろこ、く……っ!?」
もう一度、黒子くん、って呼ぼうとした私は…だけど、気がついたら……。
「△△さん……」
耳に直接、彼の息が触れるのが分かるくらいに深く、抱きしめられていた。
「好きです」
「くろこくん……」
黒子くんの声が、耳に直接響いてくる。
私はまだ泣きながら、それでも一瞬で自分の顔が熱くなるのを感じた。
すると、ふと黒子くんの腕が緩んで、私を覗き込む。
つられるように私も見上げたら、ありえないほど間近で目が合って、ものすごく恥ずかしかったけど、何故か反らせなくて。
そうしていたら、赤い顔をした黒子くんが、今まで見たこともないような笑顔で、まるで溶けるみたいに、ふわ、と笑って……。
「……ぁっ」
それが何故か『あの男の子』に重なって見えて、私は目を見開いた。