第2章 水色~黒子~
その途端、
「△△さんは、何も分かってません」
黒子くんがそんな風に言うから。
「そんなことな……」
反射的に『そんなことない』って言い返そうとしたけど、
「全然、分かってません」
ばっさり切り捨てられるみたいに遮られて、私は項垂れた。
だって、黒子くんが…分からない。
もうこれ以上、自分がどうしたら良いのか、私には分からなくて。
でも…そうしたら、黒子くんが。
「何とも想ってない人に、僕がこんな話をするわけないじゃないですか」
「………っ?」
いきなり、そんなことを言い出すから。
思わず顔を上げたら、目の前の黒子くんの顔が、ほんのり赤くなってるのが見えた。
灯りをつけてない、薄暗い部屋。
だけど、暗さに慣れてきた目には、黒子くんの顔がちゃんと見える。
私は…瞬きも忘れて黒子くんを見ていた。
だって、理解できなかった。
(黒子くん…今、なんて……?)
今の黒子くんの言葉の意味が、私には分からなかった。
ううん、違う。
そうじゃなくて、理解できないわけじゃ、なくて。
だけど、どう受け止めたら良いのか、分からなかった。
(だって…そんなの……)
あるわけないのに。
そう思う気持ちが先に立ってしまうから。
私は逃げるように目を伏せた、けど、黒子くんが私を見ているのが、何となく分かる。
堪らなくて、私がきゅ、と目を瞑った、その時だった。
「△△さんが、好きです」
聞こえた声に、私は目を上げる。
だけど、口は開けなかった。
だって…そんなことって……。
びっくりしすぎて、声が出せない。
咄嗟に黒子くんから目を反らそうとしても、今の私にはもう、それさえ上手くできなくて。
動けなくて…声を返せない私に、黒子くんの手が伸びてくる。
けど途中で、黒子くんは辛そうに顔を顰めると、私に触れないまま、その手を下ろした。