第2章 水色~黒子~
そうして歩き出した私の足は、自然と部室に向いていたんだけど。
「△△さん、こっちです」
「え?」
「部室ではなく、資料室に来てくださいとのことです」
「資料室?」
「はい」
そういえば、部室に入りきらないいろんな資料を、空き部屋を借りて置かせてもらってるって、前に聞いたことがある。
でも私はまだ、実際に行ったことがなかった。
「このすぐ先です」
「あ、う、うん」
私は黒子くんの隣には並ばずに、少し後ろを歩いた。
私と黒子くんじゃ、全然歩幅が違うのに、それでも置いて行かれずに済んでるのは、黒子くんが私に合わせて歩いてくれてるから。
前に、一緒に帰った時もそうだった。
何も言わないで、そっと合わせてくれて、知らない内に、黒子くんから優しさを貰ってる。
もしかしたら、他にもいっぱい見落としちゃってるかもしれない。
それくらいに、黒子くんの優しさはさり気なくて、今はそれが…切なくて、泣きたくなるんだよ、なんて、絶対言えないけど。
そういえば、二人っきり(って言っても歩いてるだけだけど)になるのも、ちょっと久しぶり。
何を喋ったら良いか分からなくて、私はただ黙って、ついていった。
そうしたら…黒子くんが、あるドアの前で立ち止まって。
「ここです」
言いながら、ポケットから取り出した鍵でドアを開けた。
「どうぞ。床にも段ボールが置いてあるので、足元に気をつけてください」
「あ、うん」
言われるまま、私は中に入る。
黒子くんの言うとおり、そこには段ボールが幾つも積んであって(ちゃんと棚に並んでるから崩れてはこなそうだけど)、資料室っていうより、ちょっとした倉庫みたいな感じがした。
灯りがついてない上、カーテンが引いてあるせいか、部屋の中が薄暗い。
ぱたん。
ドアが閉まる音がして、一瞬、びく、として振り返ったら、ちょっと離れたそこに、黒子くんがいた。
「黒子くん……」
何だか…いつもと違うように感じるのは、この部屋のせい…なの、かな。