第2章 水色~黒子~
「あの…私に、何か?」
クラスメイトなのは分かったけど(名前も思い出せたけど)、普段、あんまり…というよりほとんど喋ったことないはずなのにな。
(何の用だろ?)
きょとん、とするしかない私に、桜庭くんは、何か、もごもご言い難そうにしてて。
「桜庭くん?」
「あ、いや、ごめん。あの、さ…今日、部活休みだよなって思って」
「? うん」
私が頷いて答えると、桜庭くんは一瞬、俯いて、それから。
「あのさ。今日、一緒に……」
「すみませんが、カントクに呼ばれていますので」
桜庭くんを遮るように割り込んだ声に、私は驚いて振り返った。
いきなりだったのも驚いたけど、この声は…だって……。
「黒子くん!?」
「く、黒子!?」
私もびっくりだけど、桜庭くんはもっとびっくりしたみたいに固まっちゃってて。
そんな桜庭くんと私の間に、黒子くんが割って入った。
「お話し中、すみません。カントクがデータの件で相談があるそうです」
「カントクが?」
「はい。休みの日に申し訳ありませんが、呼んでくるように言われました」
来てもらえますか?と言われて、私はすぐに頷いた。
だって、元々今日もデータ入力していこうと思ってたし。
それでカントクから話があるっていうなら、ちゃんと聞かなきゃ。
私はすぐに行こうとしかけたけど、
(あ、いけない)
まだ桜場くんとの話が途中だったのを思い出して、
「桜庭くん、さっきの……」
私はそう言いかけたけど。
「あ、いや、良いんだ。忙しいのに、ごめんな」
「え…けど」
「何でもな…くはないけど、俺は、また今度で良いからさ」
桜庭くんは早口でそう言うと、
「じゃな!」
って、言いながら走り去ってしまった。
今度で良いって言うなら、良いのかな。
「大丈夫…なのかな」
よく分からないけど。
つい、ぶつぶつ呟いちゃった私に、黒子くんは少しだけ振り返った。
「桜庭くんが良いというなら、問題ないと思います」
「あ、うん。そうだね」