第2章 水色~黒子~
フラれるって分かってて、その上、無理に告白したりしたら、もう『友達』でもいられなくなるかもしれない。
せっかく、友達になれたのに……。
それさえ失くしちゃうかもしれない。
壊しちゃうかもしれないのが、怖い……。
怖くて…勇気が出ない。
それなら、このままでいるしかない。
勇気がなくて、何もできないのは私なんだから。
それに、もうじきWC予選だって始まる。
データ管理はもちろんだけど、もっと何かしたくて…自分にできることを探したくて、今はスコアのつけ方やテーピングを教えてもらうようになった。
だから、こんな風にうじうじしてる場合じゃない。
こんなんじゃ役に立つどころか、迷惑になっちゃうよ。
そんなの…嫌だ。
そんな自分になんて、なりたくない。
だから…私は『普通』でいようって決めた。
っていっても、なかなか上手くできなかったりもするし、黒子くんとの距離をどう保ったら良いのか、自分でもまだよく分からなかったりもするけど。
でも……。
(大丈夫……)
自信なんか、ないけど。
けど、きっとできる。
ううん、しなきゃいけない。
『普通』にしなきゃ…なんて意識しなくても、普通でいられるようになるまで、どれくらい掛かるのかな、とか思っちゃうけど。
(いやいやいや、だからそんなこと考えちゃ駄目なんだってば)
はぁ…なんて、うっかり溜息を吐いちゃった休み時間、私は友達の甲高い声に、はっ、とした。
「えー、嘘!?相楽くんと付き合うことにしたの?」
「ちょ、ちょっと、しーっ!あんまり大声出さないでよ!」
「ごめーん。でもだってさ、この前まで柘植くんのこと好きだって言ってたじゃん。ね、○○もそう思うでしょ?」
いきなり話を振られて、私は、びく、とした。
「えっと、え?ごめん、ちゃんと聞いてなかった」
「もう、○○は。だからね、この子が相楽くんに告られて、付き合うことにしたって言うんだよ?」
「え?」
そう聞いて、私は驚いた。
だって彼女は確か、柘植くんていう、隣のクラスの人が好きだったはずなのに。
それなのに……。
「柘植くんのことは?」
自然に浮かんだ疑問に、もう一人の友達も、一緒に頷いてる。
けど、当の彼女は、あはは、と空笑いして、顔の前で手を振った。