第2章 水色~黒子~
そりゃ、いつまでそんなこと言ってられないって分かってるけど、少なくとも今はまだ駄目…だから。
(ごめんなさい、黒子くん)
心の中で謝りながら、私はテーピング練習の時、黒子くんを避けまくった、っていっても、データ入力の片手間だから、そんなにしょっちゅうってわけでもないけど、黒子くんは勘が良いから、私が意識して避けてるって気がついてそう……。
怒ってるかな。
何で?って思ってるかな。
けど…ごめん。
ごめんね。
黒子くんは何にも悪くない。
ただ私が…駄目なの。
(ごめん……)
それから部活が終わって、外がすっかり暗くなった帰り道。
女子(カントクと私)は、家の方角が同じ男子部員の誰かと、必ず一緒に帰る決まりになってる。
明るい内ならともかく夜道は危ないから、女子一人の帰宅は厳禁…って、そういえば前にも言われたっけ。
そういう理由もあって、私は今まで何度も黒子くんに送ってもらってた。
『送ります』って言ってくれる黒子くんの言葉に、何も考えずに甘えちゃってた。
けど、今は違う。
もうやめようって、自分で決めたんだから。
だから…暗くなってから帰る時は(最近は陽が短くなったから、ほぼ毎日だけど)、黒子くん以外の人に、一緒に帰ってもらうようにした。
テーピングのことにしろ、帰りのことにしろ、これはちょっと露骨かな、って自分でも思うけど。
だって他に、どうしたら良いか分かんないんだもん。
こういう時、どうしたら良い?
彼女がいるって分かってる相手を、どうしても意識しちゃったら……。
辛いなら離れちゃえば良いかもしれない。
しばらく距離を取って顔を合わせないようにするとか、そうできたら、ちょっとは違うかもしれないけど。
クラスも部活も、委員も一緒なのに。
顔を合わせないなんて、そんなの絶対に無理な環境で、私はどうしたら良いんだろう?
普通に振る舞って、『友達』の顔しながら本当はどきどきして。
だけどいつか、このどきどきが治まるまで、じっと我慢するしかないのかな。
それとも、もういっそフラれるの覚悟で、告白するとか?
そんなことも、ちらっと考えるけど。
(無理だよ……)
前にも似たようなことを考えた時もあったけど、やっぱり私には、そんな勇気は持てそうにない。