第2章 水色~黒子~
「おはよう、黒子くん。どしたの?こんなとこで」
教室の入口でぼんやりしていた僕に、一番聞きたくて、でも今は聞かない方が良いかもしれない△△さんの声が近づいてきました。
「いえ、何でもないです。……おはようございます」
つい俯いてしまった僕の横で、△△さんは心配そうに立ち止まりました。
「黒子くん?大丈夫?」
(あまり大丈夫ではないかもしれないですけど、そんなこと…言えるわけないです)
「もしかして、体調悪い?」
「いえ。大丈夫です」
『どうして僕を避けてるんですか』と、できればここで訊いてしまいたいです。
でも、訊いてもきっと、君は本当のことを言ってくれない気がするんです。
きっと、
『そんなことないよ?』
とか、そんな風に答えるんだろうって、分かってしまうんです。
だって実際、直接避けられてはいないんですから。
今だってこうして心配してくれていて、普通に会話もしてる。
だけど二人きりにはならない…ただそれだけ。
それだけですけど…感づいてしまった僕には、とても重いことなんです。
「無理しないでね。具合悪くなったら、保健室行こう?」
そう言ってくれるのは、いつもの△△さんなのに……。
今までだったら、△△さんがこんな風に心配してくれたら、とても嬉しかったはずなのに。
「はい。ありがとうございます」
今は…苦しいだけです。
こうして、△△さんのくれる言葉に答えることさえ……。