第2章 水色~黒子~
やがていつものように練習が始まると、△△さんも最初はいつものようにデータ入力へ。
それから少しして、カントクが様子を見ながら、テーピングやスコアを自ら教えたり、他の誰かに先生役を任せたりという、昨日までとは少し違う日常が始まりました。
△△さんが色々なことを覚えようと頑張っていたり、今までよりもみんなと打ち解けていくのは、僕も、とても良いことだと思いますし、応援する気持ちになります。
でも…それから日が過ぎるごとに、△△さんを純粋に応援できなくなってきた僕は、心が狭いのでしょうか……。
テーピングを覚えることになった△△さんは、実際に誰かの腕や足を借りて練習をするようになりましたが、僕が練習台になりましょうか、と言ってみても、何故か、
「ごめんね。今日は火神くんにお願いしちゃったんだ」
とか、
「今日は先輩が実験台になってくれるって」
とか。
そんな調子で、僕は何となくテーピング練習の対象外にされているような気がします。
僕の気のせいかもしれませんが、でも……。
陽が落ちるのが早くなったこの季節、部活が終わる頃には、外はすっかり暗くなっています。
そうなると、カントクと△△さんは、必ず誰かが送る、というのが暗黙の決まり事でした。
そして△△さんを送るのは、帰る方向が同じなのも手伝って、今までは僕だったのですが(といっても数回ですが)。
「ありがとう黒子くん。でも今日は大丈夫だから」
「え……」
「じゃな、黒子」
こんな風に、△△さんが違う人とばかり帰るのを見ていると、やっぱりただの気のせいではないと、感じてしまいます。
話しかければ相変わらず普通に応じてくれて、その態度も何もおかしなところはありません(そういえば、一時期のように挙動不審なこともなくなりました)。
でも…考えてみたら、二人きりになることがなくなっていると、僕は気がつきました。
そうはいっても、元々、二人きりになる機会なんて、今までだってそうあることではありませんでしたが。
それでも一度悪い方に考えてしまうと、どうしてもネガティブになっていまいます。
(△△さんは…どうして……)