第2章 水色~黒子~
がばっ、と△△さんに抱きついて、△△さんはびっくりしすぎたのか石化…は言い過ぎかもしれませんが、瞬間硬直してしまいました。
しかも、そのせいも手伝って。
「おい、リコ!んな勢いつけたら…っ!」
慌てる部長をよそに、勢いそのままのカントクに飛びつかれた△△さんは、当たり前ですが受け止めきれず。
「わっ!?」
「きゃあっ!」
二人揃って(といってもこの場合下敷きになるのは確実に△△さんです)、バランスを崩していくのを、慌てて止めようと僕も駆け寄りましたが。
とんっ。
△△さんのすぐ後ろ…いつの間にそこにいたのか、と僕が思うほど静かに水戸部先輩が立っていて。
あわや後頭部から床にダイブ…という△△さん(とカントク)を水戸部先輩はいつもの無言のまま、ちょっとだけ微笑みながら、難なく受け止めていました。
「え?わっ!?す、すみません!」
水戸部先輩に寄り掛かってしまった自分に気づいて、慌てて飛び退く△△さんと、
「あ、ありがと。助かったわ、水戸部くん」
ほっとしつつ、△△さんのように慌てたりしないカントクは、やっぱりさすが…なんでしょうか。
ですが、それはそれとして。
「っぶねーなぁ。水戸部がいなかったらヤバかったぞ」
めっ、と言わんばかりにカントクを叱る部長と、おとなしく項垂れるカントクという図は珍しいかもしれません(というか、初めて見ました)。
でも、カントクにも思うところはあるようで。
「だってだって、ホントはずーっと呼んでみたかったのよー!私、一人っ子だしさ、男バスなんて野郎ばっかでむさ苦しいったらないし!」
力説するカントクは、何だかいつもより子供っぽく見えます…が、そんなこと言ったら、きっと殺されます。
そうでなかったとしても、死ぬほどメニューを追加されそうなので言いません。
でも、先輩達は違いました。
「一人っ子なのと、むさ苦しいってのはズレてないか」
「てか、むさ苦しいとか。さり気なく失礼な奴だな、おい」
暴走気味なカントクに、伊月先輩と部長が冷静(?)な突込みを入れているのが、何だか新鮮です。
でも一人だけ、ちょっと意見が違いました。
「リコは妹が欲しかったんだよな」
にこにこ笑った木吉先輩がそう言った途端、
「鉄平、分かってる!」