第2章 水色~黒子~
他の…△△さんがデータ管理に留まらず、スコアやテーピングを覚えたいと希望したことについては、何の疑問もありません。
昨日の帰り道、石嶺さんとの問題が片付いたことで、△△さんの中で気持ちの変化があったらしいのは一緒に話していて、感じました。
だからさっきのカントクの発表も、△△さんがまた一歩、新しく前へ進もうとしているのだと感じて、純粋に嬉しく思いました。
ただ、
(オーバーワークにならなければ良いですが)
とは思いましたが、そこはまた二号に活躍してもらうとして。
それに、カントクもその辺りのことはちゃんと分かってくれているみたいなので、それほど心配はしていません。
だから僕の疑問は、カントクに訊ねた一つだけ…ではありますが。
(急に下の名前を呼び捨てとか、どうなんですか)
カントクだけならともかく、他の先輩も全員…というのが、何だか……。
もやもやというか、むかむかというか、とにかく不快な感じを抱えてしまう僕の傍では、
「あ、それなら俺も思ったっす!」
「俺もー!」
「だよな」
一年生サイドから同じ疑問が一斉に沸きあがって、カントクは何故か一瞬、たじろぎました。
「ああ、えーっと、それは~~~」
それまでとは一転、というより、いつもとは明らかに違う挙動で目を泳がせるカントクに、まるで全員の気持ちを代弁するかのように、部長が突っ込みを入れました。
「ダアホ!なに誤魔化そうとしてんだ」
「ご、ごまかそうとなんかしてないよ!」
そういう言い方はないでしょーが、とカントクは部長に噛み付きました。
「大体、自分だって便乗したくせに!」
「ち、ちげーだろ!」
「違わないでしょ!」
顔…というより、角(が見える気がします)を突き合わせる二人に僕達は呆然として、ちら、と見れば、△△さんはちょっと困ったようにしていて、そんな△△さんの頭に、休み時間そうしたように木吉先輩が、ぽん、と手を乗せました。
「おいおい、肝心の○○を困らせてどうすんだよ?なあ、○○」
「え、あ、はい…あ、じゃなくて、私は別に」
△△さん…何だか困惑してるのが見え見えです。
すると、カントクがおずおずと△△さんに近づいたと思ったら。
「もしかして…ダメ?嫌だったとか!?」