第2章 水色~黒子~
「気にするなよ。お陰で俺も面白かったし」
「う……っ」
僕は木吉先輩のそれを、二年生校舎とここまでの往復のことを言っているのだと思いました。
実際、それもあったようでしたが、
「リコと日向が…っつーより、リコが面白かったよなー」
声を上げて笑う先輩に、何故か△△さんはちょっと困っている風で、他にも何かあるような、そんな感じを受けます。
でも、それが分かる間もなく、
「っと、俺も戻らないと、授業に遅れちまう」
木吉先輩は時計を見ながら、やばい、と口走りました。
「次、移動教室なんだよな。もう行かねーと」
そう言って、木吉先輩は△△さんの頭に手を乗せました。
「んじゃ、また部活でな。……○○?」
「…っ!は、はい、木吉先輩」
(え……?)
言い残して帰っていく木吉先輩の最後の言葉…というより、△△さんの呼び方が昨日までと違っていることに、僕は驚きました。
△△さんも、それには当然気づいているようでしたが、驚いているというよりは、何となく照れくさそうにしているように見えて、僕はちょっと…かなり、胸の中がもやもやしました。
カントク達に会いに行った休み時間の間に、何かあったんでしょうか。
(他には考えられませんし)
でも、そうはいっても肝心の木吉先輩は帰ってしまいましたし。
△△さんも……。
「あ、チャイム」
鳴り出したチャイムの音に、△△さんも席に戻ってしまいました。
その後の休み時間も、何となく聞きそびれてしまった…というよりは、
『さっきの先輩とは、どういう関係?』
『ちょっとカッコ良かったよねー』
なんて友達に弄られつつ、△△さんが楽しそうにしているのを邪魔できなかったというのが正直なところですが、とにかく、気がつけば部活の時間になっていました。
(休憩の時にでも、話ができれば良いですが)
そう思っていた僕は、この日の部活で予想外の光景を見せ付けられることになりました。