第2章 水色~黒子~
でも時間内に戻って来られて良かった、と思う目の前では、△△さんの友達が△△さんを迎え入れながら笑っている…のは良いとして。
「っだよ、お前、もしかして迷子か? ダッセーなぁ」
△△さんの頭を弄る火神くんはちょっと…だったので。
後ろから近づいても気づかない彼の膝へ。
かくんっ!
「のわっ!?って、黒子!テメェ!」
騒ぐ火神くんが、僕がいるはずの場所を振り返る間に、僕は更に移動して、△△さんを火神くんからそれとなく引き離しました。
(髪が乱れてしまってるじゃないですか。火神くんは乱暴です)
「大丈夫ですか?」
迷ったこととか、火神くんのこととか、色々含めて『大丈夫ですか?』と訊ねた僕に、△△さんは頭を押さえながら(火神くんに弄られたのが気になるみたいです)苦笑いしました。
「うん。平気…じゃあ、なかった、かも」
「でも、行けたんですよね」
だから、木吉先輩がここにいるわけですし。
思いながら、ちら、とドアを見ると、木吉先輩が、いつもの屈託のない笑顔で△△さんを見ました。
「二年の校舎で、一年の女の子がうろうろしてるなあ、って思ったら、△△だったんだよ」
「せ、先輩……っ」
あっけらかんと言う木吉先輩に、△△さんは恥ずかしそうに首を竦めました。
つまり、△△さんは二年生の校舎までは行けたものの、目指すカントクや部長の教室には辿り着けなかった…と、そういうことみたいです。
そして、そこを木吉先輩に保護(?)されたみたいで。
「それで、カントクには会えたんですか?」
結果を聞いてみると、
「俺がついてたんだぞ?当たり前だろ?」
ちゃーんと案内してやったさ、と笑う木吉先輩に、△△さんも、こくこく、と頷きました。
「カントクにも、部長にもちゃんと会えたよ。木吉先輩のお陰で、昨日のお礼もちゃんと言えたんだ」
そう言って、△△さんは改めてドアに近づきながら、木吉先輩に頭を下げました(ちなみに火神くんは、さすがに先輩の前だからか、おとなしく席に戻ったみたいです)
「ありがとうございました。それに、帰りまで送ってもらっちゃって……」
すみません、と△△さんは肩を竦めましたが、木吉先輩はとても楽しそうでした。