第2章 水色~黒子~
翌日、いつも通りに登校した△△さんを見て、僕はほっとしました。
「おはようございます、△△さん」
「あ、黒子くん。おはよう」
問題が解決したのは確かですが、昨日はいつもより帰るが遅くなってしまいましたし(その一因は僕自身にもありますが)、色々と疲れさせてしまったのではないかと、実は内心思っていたので、△△さんが元気そうなのは何よりです。
それからいつも通りに授業が始まって…でも休み時間になった途端、勢い良く教室を飛び出していく姿を、僕は自分の席から見送っていました。
『明日、カントクと部長にお礼言わなきゃ!』
思った以上にたくさん話した昨日の帰り道、カントクと部長にお礼を言い損ねてしまったと△△さんが慌てていたのを、僕はその背中を見て思い出していました。
部活の時でも良いのでは、と僕は言いましたが、△△さん的には、できるだけ早く言いたいみたいです。
でも…そういえば。
(△△さん…一人で大丈夫でしょうか)
二年生の教室に行くのは、もしかして初めてなのでは……。
走っていく背中を、さっきは微笑ましい気分で見ていた僕でしたが。
(何だか心配になってきました)
こんなことなら一緒に行けば良かったかもしれないと思う僕をよそに、もうじきチャイムも鳴るのに、△△さんはまだ戻ってきません。
(やっぱり、何処かで迷ってしまったのかもしれません)
二年生の教室は、僕達一年生とは別の棟にあります。
渡り廊下を使えば済むといえばそうなのですが、渡り廊下そのものが幾つもあるので、慣れるまでは迷いやすいかもしれません。
実際、僕も以前、迷いそうになったことがあります。
それに△△さんは、自分のことを方向音痴だと言っていたくらいですし。
(心配です)
気になった僕は、とりあえず二年生の校舎近くの廊下まで行ってみようと思い立ちました…が、そこへ。
「ここで大丈夫か?」
「は、はい。すみませんでした」
開いたままの教室のドア越しに、△△さんと、何故か木吉先輩がいました。
二人の台詞からして、やっぱり△△さんは道に迷ってしまったみたいです。