第2章 水色~黒子~
「ココアって、甘くて美味しいよね」
以前(あの時はチョコシェイクの話だったと思います)も見せてくれた、あの時と同じ笑顔に、僕もつられてしまいました。
「そうですね」
「でも黒子くんはコーヒーなんだ」
「そうですけど、無糖じゃないですよ」
「そういう問題じゃなくて、苦いよ…コーヒー」
苦いのって飲めない…と、顔を顰めるのが何だか可愛くて、僕はつい、
「ぷっ」
そんなつもりはなかったんですが、つい吹き出してしまって、△△さんが目を吊り上げるのが分かりました。
「今、子供っぽいとか思ったでしょ」
「そんなことないです」
「あるよ。学校でも友達に言われたもん」
言いながら、ちょっと頬を膨らませるのが、また可愛く見えるというか、きっとそういうところも含めて、△△さんの友達は、△△さんを『子供っぽい』とからかったのだろうと、僕にも簡単に想像できてしまいます。
まだちょっと複雑そう(?)な△△さんと一緒に、僕はベンチに座りました。
幅広なそこに、遠すぎず、でも触れるほど近くでもない、微妙な距離で隣合いながら。
すっかり陽が落ちてしまった今も肌寒さを感じない、過ごしやすい空気の中、僕はその夜初めて、帝光バスケ部での日々を、当事者以外の人に語りました。
楽しかったはずのバスケがそうではなくなっていく…嫌いにすらなっていった、かつての自分。
それでも嫌いになりきれなかった自分。
そして…もう一度バスケが好きになれた、今の自分を。
自分のことを話すのは、あの頃の気持ちも思い出してしまう一方で、何処か恥ずかしさも感じました。
でも、相槌を打ったり、頷いたりしながら、最後まで真剣に耳を傾けてくれた△△さんに話せて良かったと思います。
(△△さんで良かった)
こうして話せたのが…僕の話を聞いてくれたのが、その相手が△△さんで良かったと…△△さんにだからこそ、きっとこうして話せたのだと、僕は心から思いました。