第2章 水色~黒子~
(淋しそう…ですか)
僕には、△△さんが言おうとした言葉が分かってしまいました。
そんな顔をしていた自覚は、なかったんですが。
(そうですね。そうなのかも、しれないです)
あれほど大好きで、夢中になって…みんなとバスケをする毎日は、とても充実していました。
でもそれは…ある頃を境に変わってしまったから……。
思い出せば、今も確かに、何処か淋しいような、哀しいような、複雑な気持ちになります。
△△さんに話しても迷惑なだけかもしれないと、そう思ったはずだったのに。
△△さんにとっては、つまらないだけの話だとも、思うのに。
だけど……。
「良かったら、僕の話を聞いてもらえますか」
今まで一度も、自分から話そうとしたことのなかった、帝光中男子バスケ部でのことを。
「面白い話ではありませんけど」
言いながら、何となく零れたのは、苦笑なのか、自嘲だったのか、僕自身にも分かりませんでしたが。
「うん。じゃ、あそこに行こっか」
迷いなく、しかも笑顔で頷いてくれた△△さんは、今しがた通り過ぎた公園を指差しました。
誰もいない公園の入口近くに、△△さんがベンチを見つけてくれたのを横目に、僕はその向こうに見える自販機で(当然バニラシェイクはないので)ホットコーヒーを二つ…ではなくて。
一つは……。
「ココアで、大丈夫でしたか?」
△△さんが甘いものが好きなのは知っていますが(なのでコーヒーはやめました)。
(これはどうでしょうか)
そっと差し出してみると、ベンチ前に立っていた△△さんは、
「ありがとう!」
喜んでくれた一方で。
「ちょっと待ってね」
言いながら鞄を開ける仕草で、僕は△△さんが財布を出そうとしているのに気づきました。
「△△さん、良いですから」
「良くないよ」
「これくらいさせてください」
「でも」
「お願いします」
すぐに自分の分を払おうとする△△さんには好感を持てますが、これくらいはさせて欲しいです。
だから…とお願いすると、
「じゃあ、いただきます」
△△さんは、はにかむように頷きながらボトルを開けました。
するとすぐに甘い香りが漂って、△△さんは嬉しそうに頬を綻ばせました。