第2章 水色~黒子~
△△さんにとって、とても疲れる一日だったでしょうから。
「大丈夫ですか?」
僕の言葉に△△さんが、はっ、としたように顔を上げました。
「え?あ、大丈夫だよ」
△△さんは、何か考え事をしていたようでしたが、
「ごめん、ちょっとぼーっとしちゃってた」
そう言って笑顔を作る△△さんに、僕は頷きました。
「今日は、疲れてしまいましたね」
△△さんの疲労が気になって、僕はそう言ったつもりでしたが。
「そうだよね。黒子くんもみんなも、部活だけでも疲れてるのに」
ごめんね、と続きそうな△△さんの様子に、意図とは違う意味で伝わっていることに気づいた僕は、首を振りました。
「部活の練習は確かにきついですが、僕が言ったのはそうではなくて、今日は△△さんがとても疲れる一日になってしまったと思ったんです」
「私……?」
僕の言葉に、△△さんは驚いているようでした。
でも僕からすれば、この数日、いつもより遅くまで部活を頑張って、その上、今日は石嶺さんとのこともあって。
肉体的にも精神的にも、どんなに疲れているだろうかと、ずっと気になっていました。
それなのに当の彼女は。
「私は平気だよ。それにあんなに色々してもらったのに、私が疲れたなんて」
「それとこれとは違います」
色々調べたり計画したのは、僕と、僕が相談を持ちかけた結果、巻き込むことになってしまった(といってもカントクはやる気満々でしたが)カントクと部長とで、勝手に進めたことです。
△△さんを守りたくて起こした行動であることは確かですが、そのことで△△さんが遠慮する必要なんてどこにもありません。
「疲れたなら、疲れたって言って欲しいです。石嶺さんにしたみたいに、毒づいてくれても良いですから」
わざと石嶺さんを引き合いに出した途端、△△さんは目を丸くして立ち止まり、頭を抱えてしまいました。
「あれは…自分でも酷いって思ってるんだから……」
できたら忘れて…という、ちょっと情けない声が、△△さんには失礼かもしれませんが可愛くて、つい口元が緩んでしまいました。