第2章 水色~黒子~
「まずはこれ。私の手にあるUSB。見ての通り、私はこれに直接触れてない。鞄から取り出す時も、誰も触らなかった。唯一、あなたが触れようとしたけど、日向くんが止めてくれたしね。これはみんなが見てるから間違いないわ。だから指紋を調べてもらえば、最後にこのUSBに触ったのが誰か分かる」
これ以上は言わなくても分かるでしょ?と、カントクが、さっきまでとは違う笑顔で、にや、と笑った。
余裕なカントクに反して、美由はといえば『顔色を失う』ってこういうことなんだって思えるくらいに、顔色が変わっていくのが見えた。
しかもカントクの話には続きがあった。
「ついでに、あなたが△△さんの鞄に細工してるとこも、ちゃと記録済みよ。証拠っていうなら、これこそ完璧でしょ?」
そう言いながらカントクが笑顔を向けたのは美由…じゃなくて。
「これのことか?」
自分のスマホを取り出した部長…だった。
「ちゃんと撮れてるでしょうね?」
確かめるカントクに、部長はスマホの画面をこちらに向けた。
「ったりめーだろーが。誰に向かって言ってんだ」
そこにはしっかりと、一部始終が動画で残されていて。
だけど部長は、ちょっとつまらなそうに溜息を吐いた。
「机の影にセットしとくだけでも良かったんだけど、しくじったら、お前にぶっ殺されるし、お陰で俺は参加できず仕舞いだったぜ」
(参加?)
何のことだろうって私は思ったけど、カントクには、すぐに意味が分かったみたいで。
ぷぷっ、て吹き出したと思うと、カントクは部長を指差した。
「さっきのバスケ、やっぱ仲間に入りたかったんだ」
「ちげ…っ」
「またまた、図星のくせに強がっちゃって。あの時はわざと△△さんを舞台から引き離すだけのはずだったのに、予定外でミニバスになった途端、すっごい羨ましそうな顔してたもんねー」
「してねーよ!」
「たのしかったー!」
「てめっ」
「ふふーん」
何だかすごく楽しそうな感じの二人…だけど、あの時、カントクが私を呼んだのは、私を舞台から引き離す為だったんだ、と私は改めて気づかされた。
そうすれば、その隙を狙った美由が行動を起こすはずだと踏んで、部長は自分のスマホで証拠の動画を撮っていた。
私が何も知らない間に、カントクも部長も、そして黒子くんも、そこまで考えて、やってくれてたんだ。