第2章 水色~黒子~
「美由と、ちゃんと話してくる」
結局、分かり合えないかもしれないし、平行線かもしれない。
どっちにしても、昔みたいな友達には、もう戻れないけど。
「こんなことまでして、あんたは結局、何がしたいの」
しかもみんなに暴言吐きまくりで(私も美由には結構毒吐いたけど)。
言いながら、一歩ずつ美由に近づく私を、止めようとする声が時々上がる。
でも、黒子くんと部長が、それを止めてくれて。
それから……。
「直接話すのは別に止めないから、気が済むまでどうぞ。ただし、ちょっとだけ、援護射撃させてもらうわ」
カントクが、そんなことを言い出した。
「カントク?」
私には何のことか分からなかったけど、黒子くんと部長は…何か知ってるような顔をするのが分かった。
「石嶺さん。あなたは多分、ずっと機会を狙って、私達の隙を突いたつもりなんでしょうけど。それ、違うから」
にぱ、と、例えるなら、まるで悪戯が成功した子供みたいに、カントクが笑った。
「四日前、私は△△さんにデータのコピーを依頼したわ。しかも期間は一週間だけ。体育館のドアの影に誰かが隠れてるのは最初から気がついてた上で、わざとあんな風に言って、あなたに『聞かせてあげた』の。黒子くんから聞いてたあなたの情報から、きっと引っ掛かってくれるって思ってね」
だからこれは、たまたま美由がヘマをした結果、捕まったわけじゃなくて、初めから仕組まれた罠だったのだと、カントクは言い切った。
「あ、もちろん、△△さんにコピーしてもらったデータは、ちゃーんと活用させてもらってるわよ?」
だからそこのところは安心してね、というセリフは、もしかしなくても私宛…らしい。
でも、カントクの『援護射撃』は、これで全部じゃなかった。
「これは△△さんにも知っておいて欲しいんだけど、今回のことを知ってたのは私と日向くんと黒子くんの三人だけ。だからUSBが△△さんの鞄から出てきたのを見て、あの判断をしたのは、みんなの純粋な意思ってわけ。それに、私達もからくりを知ってたというか、仕掛けた側ではあるけど、最初からあなたを信じてた。だからこそ、今回のことも考えたし、仕掛けもしたのよ」
それを忘れないでね、と言われて、私は何だかもう、我慢できなかった。