第2章 水色~黒子~
だけど証拠は…私の鞄の中にあった。
それを突きつけられたら、私には潔白を証明する方法がない。
その上で、どっちを信じるか…なんて、そんなの……。
(そんなの…決まって……)
目の前が、涙で滲みそうになる。
だけど泣きたくない。
ここでは、泣きたくなかった。
美由が見ている場所でなんて、絶対に。
そんな私の前で、みんなが一斉に動くのが見えた。
互いに相談する様子も、迷う様子もない、全員が動いた先は……。
信じられない思いで、私はその光景を見ていた。
すぐ隣には、変わらずに黒子くんがいてくれて。
そして…他のみんなも……。
「みんな、それで良いの?」
成り行きを見守っていたカントクがそう言うと、みんなが呆れたような顔をした。
「分かりきったことさせないでくださいよ、カントク」
「ほんとっすよ」
誰も彼もが当たり前だと言わんばかりにぼやくのを、カントクは笑って聞き流しながら、
「私は元々こっち…ってわけで、全員一致ね」
気が付けばバスケ部員、全員が、いつの間にか私の傍にいて、最後には部長が締めるように頭を掻いた。
「そもそも信頼できねえ奴を、マネージャーにするかってんだよ」
言うだけ言った部長は、にっ、と私を振り返る。
戸惑う私に、隣にいた黒子くんが静かに笑った。
「つまり、みんなが△△さんを信頼しているということです」
「……………」
私は泣きそうだったのも忘れて、目を丸くした。
だって、証拠は私の鞄の中にあったのに……。
私はそれを口にしなかったけど、黒子くんには、私の気持ちが見えるみたいだった。
「僕は△△さんに『分かって欲しい』と言いました。それは、このことだったんです」
「え……」
「僕も、みんなも、△△さんを信頼しています。△△さんが自分で思っているよりも、ずっと」
いつか信頼されるようになりたいと思ってた。
その為に、頑張ろうって思った。
けど私は、ちゃんとそう思ってもらえてた…って、こと……?
嬉しくて、でも信じられないような気持ちで、私は上手く言葉が出せなかった。